並んで歩く２人に並走するカメラ。瑞々しい画面。青春のムダ遣いにニンマリ。天才ジャック・ロジェ。

ただナンパしてうまくいかない話ではあるけれど、カーステレオから流れる音楽で踊るシーンのかけがえのなさ…

ポマードで髪を整えた二人の男の子。
一人は白のシャツを着て、一人はボーダーのシャツを着て、ストレートのジーンズはスクーターへまたがっている。
二人は海岸沿いを歩く女の子に声を掛ける。
「かわいいね」という。
女の子は彼らを無視したりするが(ほとんど！）、運が良いと一緒にデートをしてくれる。
なけなしの金で海に出る。
浜辺で抱きつく。キスをする。
言葉に詰まると、青春は過ぎ去るのがはやいとか、理屈をこねだしてみる。場がしらける。
デートはいつも難しく、楽しい。

海で戯れる彼らを連続で撮るシーン。
男の子と女の子が砂浜でキスをしているのだが、
時間が切り替わるたび、
キスをしたままポーズを変えたり、
抱きつきあったりしている。
周りには親子連れやカップルが増えたりするものの、
まるで二人には関係ない。

男の子も女の子も、いまが楽しいのだ。
それは光り輝く夏のようである。

一点、僕がひっかかるところとして、
この時期の映画に見られる、男性の冷静なナレーション。
今を楽しむ映像とは正反対に、ナレーションは大人ぶった調子で、自らの行動を省みている。

男の子を、遠くから男の子自身が眺めている。

それは流行りであるのか、ゴダール的であるのか、
色々な理由があるのかもしれないけれど、
僕としては急に映画が二層になるような、
深みを感じられる気がする。

画面の登場人物の前に語り手が現れると、
表情や行動では語られない男の子の心情が、男の子の言葉によって語られるのだ。これは今の映画だと当たり前かもしれないけれど、やっぱり新しいと思う。映画は映像を映す時間軸以外に、別の時間軸を重ねられるのだから。

映画は新しい表現を観るところだとも思う。
それが今回の映画みたいに美しくなったら、最高だよね。

映画が終わった。
ユーロスペースを出た。
Chatgptを開いて「ジャック・ロジエ、ブルージーンズの映画の主題歌は？」と聞くと、
「Filmaffinityの記録によれば、音楽はすべてこの Orquesta Sensaciónによって演奏・提供されているとされています」と返ってきた。
Colección Grandes Orquestas Vol. 5のアルバムを開いてみたが、どの曲かわからない。ただ、ラテンジャズの曲調は意外と渋谷の薄暗い道と合っていて、すぐに夏のプレイリストに入れて帰った。