眠いのを我慢しなきゃしか覚えていないです。

　リーダーの酒井という人がいうには、夢の中に前川清が出てきて、｢ムード歌謡をやりなさい｣と告げられたという。あまりにも｢宗教｣なエピソードに面食らってしまった。

　私は紅白でこの純烈というグループを見かけるたび、楽曲も歌唱力もさしてすぐれているとは思えないこの人たちが、なぜ人気なのか全く理解できなかった。なので興味本位で本作を見たのだが、まあ、宗教ということなら納得できなくもない。身内の不幸をきっかけにはまるファンとか映すので、いよいよそれっぽさ濃厚になる。

　見る前は予期できなかったのだが、この映画、純烈の四人よりもファンのほうに時間を割いているのだ。それもそのはずで、この映画を見るかぎり、「純烈」としての四人はほとんど空疎なキャラクターでしかなく、画面に映しても何も面白くない（やたら裸なのは面白い）。
　その何組かのファンは、日本武道館公演前／後という違いこそあれ、身近なものの死をカメラの前で告白していて、いよいよ「何なんだこの映画」感は増すばかりだが、中でも特筆すべきは、東京都在住の夫婦である。そのあまりに狭い部屋、偏執的に空間を埋めるグッズ・ポスター・シール、そして「Amazon勤務、副業でケーブル弄り」という妻の明るすぎるキャラクター。夫とめちゃくちゃラブラブなのである。出勤時のキスなんか「ええもんみせてもらった」って感じだ。正直言って、ちょっと結婚っていいなと思ってしまったくらいだが、終盤でふたりが純烈のライブに出かける件が最も恐ろしく、面白い。ここで二人はCDという名の「純烈との写真撮影権」を4枚購入するのだが、夫婦ふたりで映りたいと主張する夫に対して、それだと撮影できる枚数が少なくなると妻が渋る。そこで夫は逡巡したあげく、なけなしの金で「撮影権」追加購入を決意するのだ。なんという……なんという辛い光景なのだろう。「推し」と言えば聞こえはいいが、結局のところそれが搾取でしかないことは、多くの人が指摘しているけれど、こんなみみっちい形で搾取性と、それが夫婦の間を引き裂く様が露見する様は、そうそう見られないと思う。

　あと最後のほうで、あの夫婦に「夜のチューはどんなですか」とか半笑いで聞いたお前はちょっと人生を見直せ。メディア系の人間の最悪な部分が出てる。死ね、と思った。たまたま面白い箇所（脱退したメンバーについて苦言を呈するシーンとかまじひどくて笑った）がいくつかあるとはいえ、映画全体、基本的にはダメだと思います。

HMJM一派の作品ということで純烈のことは全く知らずにみたけど、ところどころでうるっと来てしまった。マッスル坂井が純烈の魅力を語るときに人生が乗っていると言ったが、本当にその通りだなと思った。リーダーの酒井一圭の言葉には嘘や偽りが無く、人生を賭して純烈をやっているのが伝わってきて、多くの人を惹きつけるのがよくわかる。同じようなコンセプトのグループがある中でとりわけ成功を収めている理由を問われて即座に運が良かったと応えるところも人間力高くて良い。

2025年100本目