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ライフテープ
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『ライフテープ』に投稿された感想・評価

自然と涙が頬を伝う。
同情からか、憐れみからか、いや違う。恐らくはその家族の温もりに触れてしまったから。お互いのパートナーを励まし合い、鼓舞し、最愛の息子を全力で抱きしめる。息子が抱えるのは12万人に1人が発症する指定難病メンケス病。この家族は逃げない。過酷な運命から。残酷な宿命から。

とある家族の1年間。それは何気ない日常で他人からは非日常な毎日。酸素測定器のブザーと痰を吸引する音が終始鳴り響く。チューブを入れられた子供は泣いていた。苦しいのだろう、痛いのだろう、不快なのだろう。母は時に背中を軽く叩きながら詰まらないように献身的にケアをする。

「健康な身体に生んであげられなくてごめんね」

自分を責めた。作中明かされる出産当時の日記からも絶望的な心中が伝わってくる。そんな妻に夫は優しく語りかける。

「この子は幸せにしてくれると思って自分達を選んで生まれてくれたんだ」

妻にとってその言葉はどれほど救いになっただろうか。そして夫自身も自分の言葉に救済されていた。彼らは決めた。家族の指針を。目指すべき場所を。この子と共に生きる事を。確かに子供のケアはつらい。泣いてる子供に気休めの言葉を投げ掛けながら注射針やチューブを突っ込まなければならないのだから。それでも生活の中心は子供であり、夫も妻も障害の有無とは関係なくただの我が子として自然と溺愛している。餅のような頬、天使のような声、弾ける笑顔、その全てが愛しく尊い。

たとえ短かったとしても楽しい密度の濃い人生を歩ませてあげたい。父として母としてこの子を護り抜かねばならない。コロナ禍で延期された結婚式。そこで子供の疾患について公表した。当初は親にも頼りきれず、友人にも話せず頼れるのがお互いしかいなかった。受け入れきれなかったのだろう。人に話せば相手に気を遣わせてしまう。なんて言葉をかけて良いのかわからず困惑させてしまう。それに自分たちもどんな言葉をかけられても受容できる程余裕がなかった。それを晴れの舞台で敢えてプログラムに盛り込むということは完全に受け入れた、辛いことは家族で乗り越えた、だからこれからも力を合わせて生きていく、そんな宣誓のようにも覚悟のようにも見える。

きれいな桜を見せてあげたい。
春先に誰か大切な人を浮かべながらそう思うのは自然なことだろう。しかしそれも子供にとっては命がけだ。途中で引き返してきたらしい。酸素の数値が安定しなかったから。

そんな折り、夫婦はある決断を迫られていた。喉の切開手術。喉から直接痰を吸引し肺に空気を送り込めるようにすることで窒息のリスクが格段に減る。その一方で失うものもある。声。世界を浄化するあの愛らしい旋律が二度と聞けなくなってしまう。

あなたの声、大好きだった。そう言いながら抱きしめる母の姿に胸を締め付けられる。手術中、夫婦はただただ終わりを待つことしかできない。それでも一番辛いのは自分達ではない。息子が頑張っているのだ。今は信じよう。

静寂を確認するかのように反響する足音が近づいてくる。止まると扉が開かれた。

手術は全て成功した。

夫婦の不安は一挙に安堵へ転化する。喜びに涙を流すわけでもない、嬉しさを共有するハグをするでもない、勇敢な我が子を讃えるかのようなハイタッチ。それは家族というチームの絆を象徴している。

映画やフィクションに限らず、病気を扱った作品は度々感動ポルノと揶揄され、お涙頂戴の演出が批判の対象となることがある。24時間テレビのハンディキャップを抱えた者達への密着映像等が良い例だろう。だが今作にあざとく感動を誘引する意図は感じられない。あるのは事実のみ。感動を与えようと下手な演出を施せば観客は気づくだろう。術後、子供の表情は相変わらず豊かだ。泣いたり笑ったり。声を失っても夫婦にとっては相も変わらぬ天使そのもの。リスクが減少した事で外出もしやすくなった。花火も見に行けたし、念願の桜も見に行けた。この家族は子供の病気と向き合いながら尊い日々を踏みしめている。その誠実で直向きな姿に観客の芯は解きほぐされ、老廃物の一滴が涙腺から溢れてくる。

「ライフテープ」

今は“テープ”という言い方はしないのかもしれない。だが家族の普遍的な在り方を記録したホームビデオのようでもある今作にはこのタイトルが絶妙にマッチしている。生きる希望、歩む強さを胸に、元気、勇気、活力を糧に明日もまた頑張ろう、そう背中を押されたような余韻が静かに劇場を支配した。
月
4.3
安楽涼監督・撮影・編集
(初のドキュメンタリー作品)
音楽:RYUICHI

隆一(ダンサー、アーティスト)

安楽監督の親友であるストリートダンサーでアーティストの隆一と妻・朱香、ふたりの息子で約12万人に1人といわれる指定難病「メンケス病」を抱える珀久の3人と猫のフィガロが織りなす切なくも愛おしい日々の物語
(2026年公開 101分)

愛と友情のドキュメンタリー✨
身内作品と言われるような作品ではなく、
鑑賞者に愛を信じる気持ち、生きる力を分けてくれる、そんな作品でした

今作は
2022年10月
中学からの親友、隆一から
「家族を撮ってほしい」
と言われた安楽監督は
隆一と妻・朱香、
銅の欠乏によりさまざまな健康問題が生じる先天性代謝異常症「メンケス病」を抱えている、生まれたばかりの珀久と
猫のフィガロの日常にカメラを向けた
というものでした

出産から診断までの朱香の日記には、現実をなんとか受け止めようとするふたりの切実な言葉がありのままにつづられており、
その内容を織り交ぜつつ
逃げ場のない孤独と不安に向き合い
日常を紡いできた彼らを親友である安楽監督の目線から
優しく丁寧に映し出されていました

珀久くんの小さな体から出ている幾つかのチューブ…
苦しげに泣く珀久くんの映像から始まり

序盤はこの家族の日常に
涙が止まらなくなりました

でも
中盤からは
この家族の強さ、優しさ、そして、その絆と、
監督のこの家族を見守るあたたかさがカメラを通して伝わり
序盤とは全く違う涙が止まらなくなっていました

珀久くんの笑顔が全てを物語っていると思いました

ただ、辛く苦しいだけではない作品です

鑑賞された方は
この家族から
きっと、生きるチカラを分けてもらえます

多くの人に
珀久くんの笑顔を見てもらいたいな
と思う作品でした✨


26-155-081
メンケス病(体内の銅が足りなくなる病気)を患った珀久くんと、その両親、
父の隆一さんと母の朱香さんを追ったドキュメンタリー。

個人的に今最も好きな映画製作会社の東風さんの最新ドキュメンタリーです。


隆一さんと朱香さんの子供への向き合い方が本当に素晴らしいです。
病気が治って欲しい。
普通の子と同じようになって欲しい。
とかでなく、珀久くんと出会えたことをある種の運命として捉えていることに強い親子愛を感じました。
前半に2人の結婚式の様子が描かれますが、参加者の様子から見るに、2人は本当に人として良く出来ているんだなと確認出来る。

隆一さんと朱香さんの夫婦仲はかなり理想的なのでは。
単に仲がいいと言うのもありますが、
その言葉は良くないよ、注射が少し浅かったよ、などお互い言い合える間柄なのが、素敵だなと。
何だかんだ長続きする夫婦ってあんな感じな気がします。

珀久くんは本当に強い子です。
まだ首もすわってない年齢なのに、毎日のように注射を打ったり、命がけの手術を何度も乗り切っている。しかもそれでいて、周囲に笑顔を振りまく明るさ。
俺も高校生の頃、簡単な足の手術をしましたが、前の晩怖くて病室で震えてましたよ(笑)
赤ちゃんに負けるっていうね。


ほとんど全部大好きなシーンでしたが、特に印象的だったのは、珀久くんに監督さんの娘さん(赤ちゃん)を合わせるシーンですかね。
カメラを向けているので、隆一さんと朱香さんは多少なり言葉や表情を選んでいると思いますが、あのシーンだけは本来カメラでは捉えることのできない、素直なお子さんの様子が見れてとても良いシーンだと思いました。

今後の東風さんの作品にはとても期待が持てそうですね。
最後に、隆一さんと朱香さんと珀久くんの幸せな時間が1秒でも長く続くことを祈っています。

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