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『声をあげるということ-性犯罪 刑法改正の記録-』に投稿された感想・評価

4.0
事実として家庭内や学校での性被害があることやLGBTQの方たちの被害率が高いことに心を痛めた
同意のない性行為を容認する日本
刑法の面か勉強になり、フラワーデモを支援したい気持ちになった
これからも変なことに利用されず続けてほしい
またここに出てくるプロデューサーのように、女性の話を聞かなかったりやたら威圧的になる男性は確かにいる
法のみならず人々の意識が変わり誰にとっても生きやすい社会になりますように
3.0
2023年の性犯罪刑法改正へとつながる市民運動を、2019年に草の根的に始まったフラワーデモと、そこにに携わる性被害当事者や支援者の姿を通して描くドキュメンタリー映画。

何より、取材対象者への気遣いと寄り添いが感じられる作品。

デモでのスピーチやインタビューを通して明らかになる、不当な判決の数々、改正前刑法の問題点、改正の進め方や、報道する側の課題。

通底するのは、性暴力をめぐる認識の断絶。その背後にある歴史と構造。個人的なことは政治的なこと。毎度お馴染みのやつ。
「法律の専門家」や「政治家」の認識が、当事者の実態や社会の認識からいかにかけ離れているかは、最近の様々な法改正をめぐる議論を見ても明らか。

しかし本作では、法制審議会や国会で、従来の議論がどのように乗り越えられ改正に至ったのかは、ほとんど説明されない。
そこがどうにも物足りない。
こういう映画は、男だから余計観ておくべきだよね、的な感じもあって観ることにした(友人からも性被害の話を聞いたことがあったりするし)。今のところ全国で1館でしか公開がないようだけど、機会があれば是非。

本作は、2019年から始まった「フラワーデモ」への密着をメインに、「性犯罪被害の当事者たちの奮闘」を映し出すドキュメンタリー映画だ。僕は正直、「フラワーデモ」の存在すら知らなかった。2023年7月に「強制性交等罪」が「不同意性交等罪」に改正されたというのは覚えているが、まさかその陰で、本作で映し出されていた人たちの奮闘があったとはいう感じである。

フラワーデモは、毎月11日に花を持ち寄って集まり、被害者の話を聞いたり、自身の経験を話したりする集まりだ。作家の北原みのりらが発起人となったこのデモは、法改正を経た現在も継続して続けられているという。

そんなフラワーデモのきっかけとなったのが、2019年3月に立て続けに出された、性犯罪裁判での無罪判決である。「抵抗出来たはず」「同意があったと男性が勘違いした」「父親からの性暴力に家族が気付かないのは不自然」などの理由により、無罪判決が相次いだのだ。そして、「そんな状況はあり得ない」と、主に女性たちが声を上げ始めたのである。

そうして始まったフラワーデモに密着し始めた当初はもちろん、法改正に至るなどとは想像も出来ていなかったわけで、上映後のトークイベントで監督は、「まさかこんな展開になるとは」みたいなことを言っていた。

さて、性犯罪に関する法律は基本的に明治時代に作られたものがベースになっていたようで、110年間も変わらなかったそうだ。2017年に一度改正されたそうだが、根本的な解決には程遠く、この法律の建付けのせいで被害を訴えた人たちが報われない状況が続いていた。

2023年の抜本的な改正前の法律では基本的に、「同意がなかった」というだけでは罪に問えなかった。「脅迫・暴力」の事実は必須だったようで、さらに「激しく抵抗した」という事実がなければダメだった。本作中でフラワーデモで自身の経験を語っていた人は、「被害を受けている時はフリーズしてしまった」とか「幼すぎてその当時は何をされているのは分からなかった」と話していたが、このように「脅迫・暴力に抵抗した」という事実を必須条件にするのは無理がある。

また「地位関係性」も重要な要素になるようだが、「抵抗できないような関係性」がどのようなものなのか定義は存在しないという。また、全然知らなくて驚いたのだが、前までの法律では、「性行為の同意」がなんと13歳から可能とされていたという(マジかよって感じだった)。欧米諸国は16歳らしいし、2023年の改正で日本も16歳に引き上げられたのだが、まさか100年以上も13歳だったとは。信じられん。

他にも、公訴時効が10年と短すぎる(事実があってから語れるまで20年30年も掛かってる人もいる)など様々な問題があり、それが様々な人たちの活動によって2023年にようやく大きく変わったというわけだ。「不同意性交等罪」では、「同意のない性交は犯罪」と明記されているそうだ。

さてここで少し、僕なりに思う「理屈」の話を書いておこう。これはあくまで「理屈」の話なので、「だから仕方ない」みたいな話ではない。

性犯罪に限ることではないが、性犯罪は特に「密室」で行われることが多いだろう。そしてだからこそ、物証も乏しくなる。目撃情報などの客観的な証拠を整えるのが難しいのだと思う。

だから、どうしても被害者・加害者の証言が中心となる。ただ、先ほどと同じ話だが、結局その証言を裏付ける証拠がない。で、法律の世界は基本的に「推定無罪」、つまり「疑わしきは罰せず」だから、「密室」の犯罪は全般的にこのような「物証がないが故に推定無罪になる」みたいなことが起こり得るのではないかと思う。

もちろん、2019年3月に続けざまに出た無罪判決がどういう背景を持ってたのか詳しくは知らないしなんとも言えないが、性犯罪を裁判で扱おうとした場合にはどうしてもこういう問題があるよな、と思う。

で、もちろんそんな「理屈」で留まっていていいはずがない。だから、世論の高まりを受けて「不同意性交等罪」に改正されたのだろう。それ自体はとても良いことだと思う。

ただ、作中でも話が出ていたが、「『同意がない』をどう立証するか」は難しいよなぁ、と思う。作中でどう出てきたかというと、ある女性が議員に陳情に行った際、その議員が「法律家は『同意がないことの証明をどうするんだ?』みたいなところで話が止まっちゃって」みたいに口にする場面である。個人的にも「確かにな」と感じる部分ではある。

そんな、「実際にどう運用するん?」という問題はあるだろうが、ただ、「同意のない性交は犯罪」と明記されたことは良いことだと思う。これによって皆が「同意が取れてる状態ってどういうこと?」と考えざるを得なくなるからだ。その思考の変化は、確実に社会を変えるだろう。

さて、僕はよく哲学カフェに参加していて、で、「性的同意」がテーマだった回も経験がある。学生も結構いたのだが、やはり若い世代の方がこういうことに関して関心が高いだろうとも感じた。

ただ、細かな議論は忘れたけど、全体的に「同意は取るべきだけど、でもどうやって取るん?」みたいな流れになることが多かった印象で、そりゃそうよね、と思う。まあでも、「こういうことについて当たり前に考える」みたいな雰囲気が出始めてるんだろうし、そういう変化はとても良いと思う。

しかしホント、法改正への積極的なアプローチがなかったら、法律が変わるのはまだまだ先だっただろう。というのも、「法律家による議論」が酷いからだ。作中には、「法律家がこんな議論をしてるらしいと話に聞いた」みたいな形でいくつか話が出てくる。で、法律家が、「親子であっても真摯な性交はあり得るんじゃないか?」とか「正常位は最も密着度が高いから精神的な繋がりがうんたらかんたら」みたいな議論をしてると言うのだ。おいおい、マジかよ。意味分からんすぎるやろ。ホント怖すぎるし、そんなわけ分からん奴らが法律を決めてると思うとマジでやってられんなって思う。

さて、本作ではメインで取り上げられる人物が何人かいるので紹介しておこう。まず、恐らく最も焦点が当てられるのが山本潤である。彼女は13歳から20歳まで実の父から性暴力を受けていた。そして、20歳で父と離れるまでそのことを母には言えなかったそうだ。彼女は、「性暴力の間だけではなく、それ以外の時も感情をシャットダウンしているような感覚だった」と当時のことを語っていた。

彼女はSpringと言う一般社団法人を設立し、性犯罪の法改正に向けた活動などを行っている。政治家への陳情や法改正検討会の委員としての出席など、本作で取り上げられていた人の中で法改正に向けて先頭に立って活動していた人だと思う。

石田郁子は中学時代、教師から性暴力を受けた。彼女は、「先生が悪いことをするはずがないという信頼があったから、自分が何をされているのか当時は認識できなかった」と言っていた。その後彼女は大人になってからこの教師を訴え、2年の裁判を経て事実認定され、教師は懲戒解雇されたそうだ。

確か彼女だったと思うが、「声を上げた時、多くの人から『なんで今さら』『忘れろ』と言われた」と話していた。また別の場面だが、フラワーデモなどが主催となったイベントに参加した女性が、「田舎だと保守的な考えが強くて、このイベントにも家族から『参加するな』と言われた人もいる」みたいなことを言っていた。被害事・加害者だけではなく、取り巻く社会そのものが変わらなければ何も始まらないと感じさせる状況だなと思う。

田嶋みづきは、東京でのフラワーデモに参加し、その後地元の群馬で自らフラワーデモを主催するようになった。本作中で唯一家族と共に出演していて、彼女の夫も度々インタビューの受け答えをしていた。彼女は後に群馬でのフラワーデモの主催を降りるが、それは「メディアで取り上げられる際、感動ポルノのような扱いになるのが嫌だった」と話していた。

で、この話と少し繋げて、本作の最後で取り上げられていた事柄の紹介しよう。実は、本作の制作側が、取材対象者である石田郁子を傷つけるようなことをしてしまった、という反省の内容である。

公開時には既に作品からは離れていたようだが(恐らく問題を起こしたとして外されたのだろう)、当初作品に関わっていたプロデューサーが石田郁子を傷つけるような言動をしたのだそうだ(具体的なことは説明されないが)。ラストの反省のパートには石田郁子も登場し、「まさに性犯罪と同じ構図があった」と話していた。制作側は取材対象者と比べればやはり「権力のある立場」であり、石田郁子は、「自分たちのメリットにもなるような良い映画を作ろうとしてくれているのだから、文句を言ってはいけない」みたいに考えていたと話していた。

彼女はまた、「『暴力はなくなってほしい』と思っている人でもこういうことを起こしてしまうのだし、だからこそどんな場面でも無自覚に暴力を発揮している可能性はある」とも言っていた。その通りだなと思う。僕は「加害側になり得る男性性である」という自覚は常に持つようにしているつもりで、それでももちろん完全などとは思っていない。で、男の中には「男性性=加害側になり得る」みたいな感覚を持ってない人も多くて、だから性加害みたいなことも起こる。こういうことは皆が自覚的でなければならないだろう。

さて、作中では、フラワーデモで様々な経験が語られる様子が映し出されるのだが、その中で一番印象的だったのが、「トランスジェンダーで、元々身体は女性だが戸籍は男性となり、だが男性が好き」という人の話。「膣がついた戸籍上男性の性被害者」というのが法律上想定されておらず、これが性犯罪と認定されるか分からない(グレー)みたいなことを警察に言われたと話していた。まあ確かにややこしい状況ではあるが、作中では、「絶対数はともかく、パーセンテージでは性的マイノリティーの性被害者は多い」という話もなされていたので、やはり拾える限りのものは拾うべきだろう。

さて、本作では、フラワーデモのきっかけの1つになった、名古屋地裁岡崎支部で無罪判決が出された事件の控訴審の様子も映し出された。父親が中学生の娘に性加害を与えた事件だ。名古屋高裁は地裁の決定を覆し、父親に懲役10年の有罪判決を下した。その後被告は最高裁に控訴したが、棄却され、刑が確定する。

この判決を受けて、原告の女性がコメントを出した。「私の裁判が1つのきっかけになってフラワーデモなどが生まれたのだから、私の訴えには意味があったと思えています」「あの時の自分と、今も苦しんでいる子どもたちに何か言うとしたら、勇気を持って一歩踏み出してほしい、です」みたいな内容だった。フラワーデモに参加した人も、「私は間違ってないって思える場所があって良かった」みたいなことを言っていたが、こういう形で連帯できたことで大きく変わったのだろうし、大きな一歩だったなと思う。

そんなわけで、多くの人が観るべき作品ではないかと思う。法改正は実現したが、まだまだ完全ではない。また、本作では扱われていないが、日本版DBSの話も進んでいるはずで、また色々と状況が変わるだろう。「性的同意」は簡単な話じゃない気がするし、たぶんこの変化はまた別の問題を引き起こしたりもするだろうけど、全体としては良くなつていくのではないかと思う。

ちなみに、トークイベントには、本作にも出演していた俳優・文筆家の睡蓮みどりが登壇し、自身の経験や感覚を語っていた。印象的だったのが、監督から「自分の被害を告白して良かったですか?」と問われて、「本音で言うと良かったとは言い切れない」と言っていたこと。後悔している部分もあるそうだ。ただ同時に、「2022年に戻ったとしたらまた同じことをすると思う」とも言っていたので、複雑な感覚なのだろうなと思う。

で、質問を受け付けるコーナーもあって、質問してみた。一応こういうトークイベントの時には、「誰も質問しなかった時用に質問は用意しとこう」的なマインドでいるのだけど、今日はそれが活かされた形。

1日の映画の日だったこともあっただろうけど、劇場は満員で、僕も久々に最前列で映画を観た。これからも注目が集まってほしいものだなと思う。

ちなみに、色々あって初めて(だと思う)映画の感想を全部スマホで書いた。疲れた。