
十二年前の暴風雨で深い傷を負った小さな町で、老女タエは焼き団子〈ワンズ〉を売りながら静かに暮らしている。ある日、岩山のそばの雑木林で、見たこともない奇形の赤ん坊を見つける。赤ん坊は団子しか食べず、町の人々はその存在を妖怪だと恐れた。 タエは一度、赤ん坊を人買いに売ろうとするが、思い直して取り戻す。そこから、タエと赤ん坊ハルの逃亡生活が始まる。家を追われ、姉の家を訪ね、認知症を患う元夫・文雄とその妻・菊子の家を訪ね、警官の小宮の家に身を寄せながら、タエはハルを抱えて町をさまよう。災害の痕跡が残る町を歩くたび、かつての知人たちと再会し、タエは失っていた感情を少しずつ取り戻していく。 しかし、ハルの存在を信じようとしない人々は、タエを精神異常者として病院に収容してしまう。必死に逃げ出して帰宅したタエが目にしたのは、息も絶え絶えのハルの姿だった。タエはハルのために盛大な葬儀を行う。 だが、二人の別れは死では終わらない。嵐の夜、町が再び混乱する中でも、タエはハルを思い続け、ただひたすらに団子をこね続ける。 そして夜が明ける。タエは新しい朝を迎える。



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