あまのかぐや

親切なクムジャさんのあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

親切なクムジャさん(2005年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

タイトルだけなら「ハートウォーミング系」かと思ってました。しかし、はたと気付く。監督、パク・チャヌクや、これ…

オープニングの、まるでPVのような美意識炸裂の映像が「イノセントガーデン」のぬるぬるしゅるしゅるを思い出ださせます。あ、なるほどパク監督だ、そして「これは嫌いじゃないかも」と微かな期待。

幼児誘拐、殺害の罪で13年間投獄されていたイ・クムジャを演じるイ・ヨンエ。ルックスは、…そうだなぁ、檀れい風?。虫も殺さぬような楚々とした美人。クムジャさんは、わが子の命を盾に脅迫され、真犯人に代わり罪をかぶって服役していたのでした。

オープニングは、その彼女の出所のシーンからです。

刑務所の門の外で、みんなお皿に乗せた白い四角いなにかを手にしていて、・・・やにわにそれにかぶりつく!ん!?!?なんだ?!と思ったら以前も何かの作品でこんなシーン観たことがありました。「心を豆腐のように真っ白くして二度と刑務所に戻らないように」という韓国の風習だそうですね。

刑務所の中では模範囚、女囚たちを助け、心を尽くして接っしたクムジャさん。みんなを苛める嫌なボス女囚にも優しく接しながら実はこっそり殺害し、女囚たちに感謝されたり、北朝鮮のスパイの老女の介護をして看守たちにも感謝されたり。
一癖もふた癖もある女囚たちも看守たちも、誰もかれも、美人で優しい女神のような、魔女のようなクムジャさんのとりこ。「親切なクムジャさん」と彼女を呼び、彼女に感謝し心を奪われる。クムジャさんのいうことならなんでも聞いてあげたい、逆に言えば「クムジャさんの頼みには断れない」と思うようになる。

現在のシーンと、服役中のシーンを交互に見せるのですが、獄中での女囚たちと現在出所している彼女たちの姿、人数が多いし、シャバでの雰囲気が変わってるからか、ちょっとわかりにくいぞ。

出所後に部屋を用意したり、改造銃の設計図を託したり、銃の装飾品を作ってもらったりするけど、それらも小さいことだけど、出所後の彼女の復讐劇の小道具として計画されていたのかな?
それから刑務所内の粗末な材料だけで見事なデコレーションケーキを作ったクムジャさんに感服したケーキ屋の店主が、自分の店で彼女を働かせることになったけど、これも当時の事件を知ってる刑事さんと再会するため?

すべてが13年がかりの計画のような、そうでないような。

真犯人の近くで働いたり、妻になった元刑務所仲間もいたので、そちらは復讐計画のメインだろうけど、あんなにたくさん協力者って必要だったかなぁ、とも思いました。刑務所内での女たちのドロドロは見応えあ、…いやいやいや見るもおぞましかったけど。

後半は、真犯人による犠牲者がクムジャさん事件の子供だけではなく、他に複数いたことがわかり、クムジャさんは廃校に彼らを集めて復讐のレクチャーをする。あれ?元女囚は、真犯人を拉致するまででお勤め完了だったのかな。

前半の女囚たち、後半の被害者遺族たち…登場人物が多すぎて、ちょっとブレるな、と思ったのはこの点でした。

クムジャさんの事件の被害者である少年と、ケーキ屋で働く青年をだぶらせた幻想的な設定は、もやもやして結局なんだったかよくわからなかったけど(笑)ファンタジーとエロスと、血の匂い、これはやはり「イノセントガーデン」の雰囲気を思わせます。

ハリウッドリメイクするとしたら、クムジャさん役はやはり「イノセントガーデン」のミア・ワシコウスカのようなエロスと無垢の間にいるようなつかみどころない透明な女優さんがいいな。日本版なら多部未華子一択!(わたしセレクションならね)

個性を消したあっさり美人のようで、ときどきすごく怖い表情になるクムジャさん。清楚と妖艶の間の微妙なバランスがあって、とても綺麗。出所後、謎のアイメーク、不自然なほど真っ赤なアイシャドーの意味は?(これもすごく綺麗で目を奪われるんですけどね)

韓国映画にしては、血糊もサラサラしているように見えました。けど、真犯人の聖職者の皮を被ったえげつなさと、刃物や斧、そして「ビニールシート+血」の強烈なビジュアルは、さすが!これぞ!と思いました。

ラスト、真っ白な雪の中でかぶりつく真っ白なクリームのケーキは、出所してすぐにクムジャさんがはねのけた白い豆腐の代わりなのか。清楚な美女による「復讐の完遂」と「贖罪」の物語?

にしては、いろいろと周りにモブキャラが多くクムジャさん一人の恨みや復讐劇からどんどん遠ざかっていく気がする。また、美しい(とはいわないかな?)ごてごてした装飾物が多くて、一番見たかった芯の部分がぼやけてしまってる気がしました。ややもったいない感じ。がんばりすぎ!

刑務所の中でも一輪の清楚な花のようにふんわり微笑む「親切なクムジャさん」のなかで13年育てられていた執拗な怨念。考えてみたら、このタイトルが一番怖かったかな。
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