きまぐれ熊

回路のきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

回路(2000年製作の映画)
4.4
面白かった。

ジャンプスケアも流血もないのに我々の足元を根底から掬ってくるストロングスタイルだ。
終わり5分前までは骨太なテーマ性も持ったじっとりJホラーといった趣きで、まあまあ悪くないな〜くらいだったんだけど、結びのアンサーがかなり力強くてめちゃめちゃ満足度が上がった。批判を恐れないアンサーがかなりアーティスティックで良い。

ジャンルとしてはホラーとも言えるし社会派SF映画とも言えるし哲学的でもあるけれど、個人的には死生観の映画に見えた。
恐怖こそがテーマで怖さを楽しむ内容じゃない。けど、めっちゃ怖い。特に音の使い方が独自性あって秀逸。

社会的な繋がりの中での孤独と死の恐怖っていう物理的な側面と、あの世と幽霊というオカルト的な側面の、2軸の恐怖があって、それらをインターネットに見立てつつ繋げて描写するっていう着眼点だけでも成立するのに、そこから死と孤独と生の定義まで議題を進めていて、見た目軽いJホラーっぽい装丁の割に内容は情報量が多く複雑。
春江のバックボーンだけが時代性を感じさせて普遍性を欠く気がするけどほとんどの要素において普遍的な内容で占められていて色褪せない。
インターネットをモチーフにしてはいるものの、本質は人間なので意外とここも古さを感じなかった。

あの世界設定的には結局のところどう足掻いても死んだらシミになっちゃうだろうから、逃れようがないんだろうな。死ぬまで生きるしかない。
きまぐれ熊

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