むぅ

戦艦ポチョムキンのむぅのレビュー・感想・評価

戦艦ポチョムキン(1925年製作の映画)
3.8
目は口ほどに物を言う。

以前の職場で私史上最高早口な方と出会った。一緒に働くうちに、忙しい時は話しかけられるよりも、アイコンタクトの方が意思疎通の確率が上がるという事態が発生した。
言葉は大切にしたいけれど、その言葉の根幹は感情や想いだという事を、改めて痛感しながら「この人数では無理!」というオペレーションを乗り越えた事を思い出した。

サイレント映画。
でも、悲鳴や怒号が聞こえる。

旧ソ連のセルゲイ・エイゼンシュテイン監督が、第一次ロシア革命20周年記念として制作。
ロシアの民衆の間に皇帝の専制に対する不満が高まっていた1905年6月。黒海艦隊の「ポチョムキン号」で腐った肉入りのスープを出された水兵たちが怒りを爆発させ、ポチョムキンを占拠してオデッサの港へ向かう。
しかしポチョムキンを歓迎するオデッサの市民に軍が発砲し..。

ずっと観たかった噂の"6分間"。
『アンタッチャブル』を観た時に、とにかく印象に残った乳母車のシーン。
軍の虐殺行為によって市民が逃げ惑う今作の"オデッサの階段"のオマージュだと知ってから出会えるのを楽しみにしていた。

息を飲む迫力の描写だった。
100年の時を経て、感動出来ることに感動する。

映画のタイトルのカクテルを提供する"八月の鯨"というバー。
そこが監修した「シネマ・ウィズ・カクテル」という本に120作の映画とカクテルのレシピが掲載されている。観た後にそのページを読むのが楽しみの一つ。
今作があることは知っていたので、鑑賞後レシピを想像しながらページをめくった。
「ウォッカは使ってるはず」
当たり。ロシア産のウォッカを使ったレシピだった。
この映画の描く歴史的な背景や、今作で確率された"モンタージュ理論"よりも、ウォッカに興味がいく自分を反省しつつ、どこで感情が揺さぶられるかは本当にその人次第だよな、と言い訳めいたことを思った。

"言葉"が聞こえてくるサイレント映画。
それなのに「あ!ちょっと待って!消えるの速い!」という英語字幕と戦うためにちょいちょい一時停止しなければならない自分の英語力が悲しい。

言葉は大切。
文字も大切。
むぅ

むぅ