マサキシンペイ

メランコリアのマサキシンペイのレビュー・感想・評価

メランコリア(2011年製作の映画)
3.6
塞ぎ込む花嫁ジャスティン(キルスティン・ダンスト)の憂鬱と、惑星メランコリアの地球への接近と、二つのモチーフを象徴的に結びつけて描く美しい作品。

文学的に昇華された「アルマゲドン」だ。

地球(生命)の滅亡の不可避を前に、人間の本性が穏やかに露呈し、エゴがぶつかりすれ違い、信じた絆が崩れ離散する。


トリアーが他作品でも引用しているビジュアルイメージとして、ブリューゲルの「雪中の狩人」が今作でも登場する(恐らくは小市民的な営みの幸福感を象徴するものとして使用している)が、より今作において重要なのはミレーの「オフィーリア」からの引用である。

豊かな自然の中で結婚式をあげる悲劇のヒロイン、ジャスティンを、水面に浮かぶ「オフィーリア」に重ね合せるのは、ドラマチックな鉄板の演出と言えるし、息を呑むほどの神秘的な映像美に仕上がっているが、物語のプロットで言えば、「ハムレット」よりもむしろ「リア王」に近い。

救いはないが、トリアー作品の中では比較的観やすい作品である。
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