たにたに

質屋のたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

質屋(1964年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

✨2024年8本目✨

昨今の韓国映画のような趣を見せる。
ノワールというか、鑑賞後ドスンと心を突かれるような虚無感を得る。

主人公のナザーマンはニューヨークの質屋で働いている。無口で無愛想。時折昔の記憶がフラッシュバックする。彼はホロコーストの生存者なのだ。
店には、盗んできたものを持って来る若者や、ただ話し相手が欲しいだけのおじさんなど、その日暮らしの人間たちが訪れて来る。
従業員として、プエルトリコ系の青年を雇っており、彼はナザーマンからユダヤ式の商売の仕方を学ぼうとする夢ある若者であるのだが。。


🟢フラッシュバック 
思い出す。家族でピクニックをしていた幸せな時。そこに現れるドイツ軍兵。
ぎゅうぎゅうの列車に押し込まれて収容所へ送られる恐怖。
逃げ出す友人が目の前で殺される光景。
そして、妻が虚な目で全裸でベッドに座り、ドイツ兵の生処理道具に使われる姿。

本作ではそれがフラッシュバックのように、突如辛い映像が差し込まれる。ほんの0.1秒ぐらいしか映し出されない映像もあって、我々の脳裏に焼き付けてくるのだ。

とどめは"ある事実"を知った時。
この質屋は、売春ビジネスのロンダリングに使われていたのだ。
彼は知らぬうちに犯罪に加担していた。
思い出す。妻のあの姿を。
彼は壊れていく。


🟢もはや痛みを感じない
質屋のオーナーに歯向かうナザーマンは、執拗に暴行を加えられる。
もうどうでもいいやと、質屋に訪れる客には大金を渡し始める。

そんな折に、店に訪れて来る強盗集団。
彼らは、従業員プエルトリコ系青年の元犯罪仲間だ。青年は危害を加えないことを条件に協力したが、仲間たちは銃をナザーマンに向けた。青年は庇うように銃弾を身に受ける。

また目の前で、1人の夢見る青年が死んだ。
ナザーマンは絶叫する。

なんて辛いラストだ。
ナザーマンを演じたロッド・スタイガー。
ベルリン国際映画祭男優賞のその演技は圧巻である。

 
たにたに

たにたに