たにたに

グリーンマイルのたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

グリーンマイル(1999年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【治癒能力】2023年84本目

ジョン・コーフィ(マイケルクラークダンカン)の印象だけがとにかく残る映画ですが、脇を固める死刑囚の面々(サム・ロックウェル/マイケル・ジェッター/グラハム・グリーン)がとにかく良い演技。主役トムハンクスを食ってます。

この死刑囚それぞれの死に様だけでも一見の価値がある。電気椅子シーンは目を逸らしたくなるほどの残虐性がありますが、しっかりとその順序(スイッチを入れる、スポンジを濡らす…)を説明しながら演出しているのは作品の丁寧さを感じます。
本作の良いところはこの点に限る。個人的に。


ジョンの奇妙な能力と、小虫みたいなのを吐き出すシーンには戸惑いを感じました。
ファンタジー要素が思ったよりも強くて、拍子抜けしたのは正直なところ。
しかし、能力使用時に電力に影響を及ぼすという関連性がよく分からない演出を惜しみなくする辺りは本気を感じます。
視覚的なインパクトはしっかりと伝わってくる。
ただ、トムハンクスの尿路感染症が一瞬にして治って、妻と激しい一夜を過ごす演出はまだ許すとして、そこからジョンの能力を今にも息絶えそうな所長夫人を助けるために利用するというのは違和感を覚えます。
3時間という長丁場のなかで、このシーンを入れる意図が読み取りづらい。しかもそれに対して、まともな労いの言葉もない。

おそらく宗教性が伴っているので私には伝わりづらいのでしょうが、他人の痛みを自分の痛みにするというジョン・コーフィの存在。これが黒人かつ少し幼稚に描かれているので、違和感がでてくる。白人警官を「ボス」と呼ぶあたりも。
少女レイプ殺人犯として収監されるコーフィも、ただその能力を利用されて最終的には殺される。彼が真の犯人ではないことを理解して、だ。しかも涙を堪えながら電気椅子に座らせる。この矛盾が理解し難い。

さらに年老いた主人公の男性が、ある映画を見て当時のコーフィを思い出し、耐えられず席を後にするが、それがなんの感情なのかよく分からない。これはコーフィを助けてあげられなかった感情じゃなくて(実際に助けようとしてないし)、コーフィという従順な存在をただ思い出し、死刑執行人として仕事をした自分の行動の辛さに浸っているだけではないだろうか。
映画を見てコーフィを思い出して泣き出すのは、ちょっと飛躍しすぎかなぁ。
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