オシリー

パプリカのオシリーのネタバレレビュー・内容・結末

パプリカ(2006年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『パプリカ』
夢と現実、その境界を意識すること。世界にはあらゆる境界が存在し、そのどちらか片方に傾倒することの危険性を説いている映画だと思いました。夢に溺れた者は現実を見失い、現実を過信した者は自分を見失う。きっと人は、夢を信じながら現実を生きないといけないのです。粉川にとって映画、そしてあいつは夢でした。夢はトラウマとなって、彼を苦しめます。しかし夢を描くことが出来るのは現実だけで、現実を変えることが出来るのは夢だけです。そういう意味で、彼が回復するためにはどうしてもトラウマを克服する必要がありました。おそらく、何事も同じ位置だけでは存在出来ません。自分が常に正しいとは限らないからです。自分以外にも位置があることを知っていないと、やがて待っているのは破滅であるということでしょう。あつことパプリカはお互いの位置があることを知っていました。そのためあつこは、現実にいる自分とは違う、夢の女であるパプリカを良く思っていませんでしたが、パプリカと同様に夢そのもののような存在である時田に惹かれたのではないかと思います。人があらゆる境界のなかでどのようにそれを認識し、生きていくかを考えるきっかけに満ちた映画でした。あと、やはりアニメーションや演出が素晴らしいです。夢と現実のめくるめく展開を実に滑らかに、鮮やかに描いています。人物の表情はアニメとは思えないほど多彩であり、焦点の当て方の巧みなことは映像への没入を促さずにおきません。視点や見せ方が豊富なのです。アニメーションの得意な部分、あるいはアニメーションにしか出来ないことを存分に発揮し、アニメーションの苦手な部分、すなわち映像の軽さ、とでもいう部分も感じられない。映像に密度があるということです。作品の内容を考えるに、この作品はアニメーションと合わせて傑作なんだ、と思いました。
オシリー

オシリー