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セルビアン・フィルムのhorahukiのレビュー・感想・評価

セルビアン・フィルム(2010年製作の映画)
3.7
倫理的にやったらあかんことを山盛り詰め込んだエログロ映画を撮ろうとしてるヤバイ集団にスカウトされた、伝説のAV男優を描くキワモノホラー。

恥ずかしながら初見です。エログロはホラーの中でもそこまで好きじゃない(誰も信じてくれなさそう…)んで、こういうのは後回しにしちゃうんですが、機会があったので見てみたら、予想以上に面白かったです!

あらすじ…
ヤッた女は二度と彼のことを忘れないという伝説のAV男優の主人公。今は結婚して幼い子どももいるがお金がない。そんな中、仲の良いAV女優から、大金が手に入る仕事を紹介される。依頼主はポルノ映画を撮ろうとしているようで、生きる伝説である主人公に是非出演して欲しいという。危なそうだから断ろうとしてたが、妻や子どもに不自由させたくないあまり承諾する主人公だったが…

他の方も書いてますが、すごくしっかりとした映画になっててビックリ!こういうキワモノ系の映画って物語も演出もテキトーで、ヤバイシーンだけ力入れときゃ良いだろって感じのものが多いと思うんですけど、本作はドラマパートに時間を割くことで、異常が日常を少しずつ侵食して行く怖さと一歩踏み入れてしまうと決して後には戻れない閉塞感を対比的に強烈に演出している。そんで普通に面白い!

キワモノイメージが付いてる本作ですが、実際にそういったシーンが入るのは後半に差し掛かるくらいから。前半は妻子ある主人公が、2人を守るために彼方側に足を踏み入れるか否かを迷う姿が時間を使って描かれる。この主人公がものすごくマトモな人で、しっかりした倫理観を持ってるので、彼方側に踏み入れる時も、いざそのやばさに気づいた時も「ざまーみろ」というような感情は一切抱かせず、家族を守るためという理由がどうしようもないやり切れなさを残す。

そんで肝心のキワモノシーンですが、ここに書くとその倫理的に完全にアウトな数々のシーンの魅力が無くなってしまうので、興味がある人は是非情報を入れずに見て欲しい!もちろんオススメはしませんが。でも、直接的なシーンは少なめなので見る人によってはソフトに映るかも。そういうこと考えると、もしかしたら案外見やすい作品なのかもしれません…いや、んなわけないか(笑)

見せ方が巧みで、ジャケ画像にもあるような「俺の身に、一体何が起こったのか」的な演出をしていて、結果はすでに確定してしまっている状態で、観客と一緒に悪い予感しかしない答え合わせを後追いでして行くという見せ方がニクい。

映画の主役って脚本の通り動くわけだけど、観客からしたら主体性のある行動をしてる生身の人間として捉えられるものだと思います。でも、本作では製作者と主役を同じ画面の中で動かすことによって、主役の主体性すら否定する。そしてそれが圧倒的な絶望感を生み出す。そんな感じで、キワモノの一言で敬遠するには惜しいくらいしっかりした映画だと思いました。キワモノだけど…。
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