八木

ブリッツの八木のレビュー・感想・評価

ブリッツ(2011年製作の映画)
1.4
僕は映画を観るときに「この映画はつまり何をお届けしてくれる映画なのか」ということを考えております。ジェイソン・ステイサムが主要キャストにいる場合は「ステイサムが○○していてとてもうれしい」映画ということになりやすいので、何も考える必要がなく、非常にリラックスして楽しめることになります。
この映画は劇場で一度見ており、「酷い」と心から思った記憶があるんですが、『いやいやステイサムなんだから大丈夫っしょ』と改めてレンタルでもう一度見て、改めて「酷い」と思いました。とにかく、なんだかよくわからん映画なのです。ステイサムが刑事なんだから、殴って殺して非常にハッピーな話のはずなのに、違うのです。
タイトルの『ブリッツ』はこの映画に登場する殺人鬼を指します。稲妻ように人を殺すステイサムを指しません。ブリッツという殺人鬼を探し出すミステリーでもありません。ブリッツという殺人鬼のキャラクターを掘り下げ、闇の深さに恐れるステイサムもいません。ブリッツは超理論派な計画的殺人を繰り広げるわけではないです。元薬中の婦人警官、左遷でやってきたゲイの警部、小悪党の情報屋、腐ったマスコミの腐った記者など、それぞれドラマを持っているっぽいキャラが配置されているのに、別にそのいずれかを存分に掘り下げることはありません。主役のステイサムことブラント巡査部長は救いようのない悪党で、一切理性を使わない暴力人間であるため、『正義の鉄槌でカタルシス』という文脈からはもはや外れています。
エンドロールを見て、この話に原作があることがわかったのですが、映画にする段階で主役にステイサムという異物をぶちこんでしまったがために、原作で本来語られるべきストーリーや価値ってもんが消し飛んだのだと思われます。この映画には、ステイサムが暴力振るってハッピー要素だけが記号的に残り、それ以外は一体何を語っている映画なのか97分間ずっと意味不明なのです。あるの、こんなこと。アクションスターが主役の刑事もので「何がやりたいかわからん作品」て存在しうるの。まじで奇跡ちゃうかこれって。『何か文学的なことを語っているのに、俺がアホだから見逃してるのでは』と不安になるほどでした。事実そうかもしれません。これだからステイサム映画はやめられないです。
八木

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