ryosuke

バルカン超特急のryosukeのレビュー・感想・評価

バルカン超特急(1938年製作の映画)
4.4
ヒッチコックのイギリス時代の傑作。
正直併映で見た姉妹編の「ミュンヘンへの夜行列車」との差は歴然。「ミュンヘン~」も悪くはないのだが。しかも「バルカン超特急」の方が先の作品である。
同じようなミニチュアを用いていても臨場感が違う。
ヒロインも同一だが本作の方がより可愛らしい。前屈のシーンは素敵。
ユーモアに関しても量的にも質的にも勝っている印象。全体を通してこんなことあるかよ感はある作品なのだが、コメディ調なのであまり気にならない。英国人二人組は二作見ただけで結構好きになってしまった。良いキャラをしているし、同時に見ると設定の類似にニヤニヤできる。
影を使った迫る者、倒れる者の表現、ヒロインの昏倒を表す汽車、友人、渦巻きを複雑に重ね合わせた面白い多重露光、こちらに倒れてきたヒロインの影で暗転等の映像表現も豊か。
頭を打たせることで妄想か現実か疑わせる手法、窓の文字が蒸気で消えるシーン、紅茶のパッケージが窓に張り付くシーン、マジシャンのパネルの使い方など、一つ一つのアイデアも優れている。
最初のホテルのシークエンスはあれ?と思ったが、列車に乗り込んでからはスピーディーなトークと共にハイテンポで進行していき純粋にとても面白い。次々に謎の提示と解決を絡み合わせていく。ラストもご都合主義的ではあるが、まあ綺麗に締まっている。
ryosuke

ryosuke