第2次大戦末期の1944年10月9日、スコットランド沖。ヒトラーの敗色の濃くなったナチス・ドイツは、“帝政ロシアの怪僧”として有名な魔道士ラスプーチン（カレル・ローデン）とオカルト結社トゥーレ協会が開発した超科学装置により、スコットランドのトランダム大修道院跡で、世界征服計画を決行する。キリストの銅像に祈りを捧げる若き日のブルーム教授（ジョン・ハート）の姿。その時に地獄から召喚された赤い小猿のような生き物は、教授が率いる連合軍に救助され、ヘルボーイ（ロン・パールマン）と名づけられた。時は変わり現代、ブルーム教授が後任に選んだ新米FBI捜査官ジョン・T・マイヤーズ（ルパート・エヴァンス）が、BPRD（ニュージャージー州超常現象情報局）51課のトップ・エージェントとして赴任し、極秘裏に魔物退治をして活躍するヘルボーイと出会う。だが着任早々、ニューヨークのマンハッタンで事件が起きる。ヘルボーイやマイヤーズは、復活したラスプーチンにより、魔物サマエルが解き放たれたことを知らされる。ヘルボーイとは「レッド」「ブルー」と呼び合う仲のエイブ・サピエン（ダグ・ジョーンズ）と共にサマエル退治に挑む3人は1度はサマエルを退治したものの、一体が滅ぼされれば卵からそれに倍するサマエルが孵り、急激に成長して新たなるサマエルの脅威に晒される。ヘルボーイは秘密裏に強力な援軍となるエリザベス・シャーマンこと通称リズ（セルマ・ブレア）に会いに来ていた。

　マイク・ミニョーラの大ヒット・アメコミの映画化『ヘルボーイ』シリーズ第一弾。ナチス・ドイツ末期に魔界からやって来た英雄は、真っ赤な皮膚に、肥大化した右手を持つ赤ん坊だった。最初は手を焼いた人間たちだっが、若き日のブルーム教授は甘いものを片手に幼子を釣る。それから60年の月日が経過しているが、人間よりも老化が遅いヘルボーイはまだ20代の若さを保っていた。身長205cm、体重159kg、体色は赤鬼のような深紅色をしており、頭には目立たぬように削った角の付け根が切り株状に残っている。キャンディなどの甘いものに目がなく、愛しのリズに近付くマイヤーズに嫉妬する姿は悪魔ながら、人間以上に愛らしくコミカルで人間臭い。見た目は完全に醜い悪魔だが、優しい心を持つヘルボーイの姿と対照的な、美しい天使のようなリズの姿は、アメコミ映画ながら、さながら『美女と野獣』の変奏のようである。精神病院の中庭でヘルボーイの噂を聞いた美女はゆっくりと中庭に歩み寄る。そこには幼馴染のように育てられたヘルボーイの純真無垢な瞳がある。9歳の子供に恋のアドバイスを受けるヘルボーイの姿は、不器用な男のカッコ良さに溢れている。なかなか老いないヘルボーイと違い、60年の時を経てしまった親代わりのブルーム教授は自身の終末の時を憂い、マイヤーズにその後を託す。「姿形は悪魔でも、心は人間になれるように見守って欲しい」そう託されたマイヤーズは皮肉にもヘルボーイとの引くに引けない三角関係に陥る。アメコミ映画ながら、三角関係の機微を据えた今作は、図らずも異形の英雄の悲哀を浮き彫りにする歪な力作となった。

見た目にインパクトのある主人公とは裏腹に、思っていた以上にキャラが弱かったり、描きたいテーマが主人公の葛藤なのか、新米捜査官との友情、リズとの恋愛なのかもよく分からない程どれも中途半端になりながらストーリだけが進んでしまい残念だった。

“生まれや環境ではなく、どう生きるかが人格や個性を形作る”

ギレルモさんの手にかかればアメコミだってダークファンタジーに。1トーン下がったスクリーンにグロいクリーチャー達。なのに何故か心地よい。普通のアメコミなら完全に敵な奴らが人間より人間味溢れる主役なのが好き。そして所々にヒーロー物とは思えないような美しい構図。（例えば教授を抱きしめる時の上からのショット）

ヘルボーイ（ロンパールマン）があの風貌の割に一途で嫉妬深いところが可愛いね。半魚人のエイブ（ダグジョーンズ）は他でもなく“シェイプオブウォーター”の半魚人。この人“パンズラビリンス”ではペイルマンだし、ある時はバイバイマンだし、ある時はファンタスティックな銀河の最大の敵だし本当にカメレオン俳優とかの次元を超えてるよね。