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ジャコ万と鉄
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『ジャコ万と鉄』に投稿された感想・評価

レオン

レオンの感想・評価

3.5
黒澤明の監督作品は30作全て見ているが、脚本のみの作品ではまだ未見が多々あったうちの1本。
特に三船敏郎とのコンビは今後も追って見る予定。
(フィルマークスの今作タイトルの「万」は「萬」の誤り)

さて今作、やはり三船敏郎の存在感は別格だ。
序盤がややスローで、進藤英太郎(親父役)の頑固な演技が目に留まるぐらいだが、三船さんが登場以後は各人物の心理描写がかなり増すぐらいに感じる。

劇中の宴シーンで三船さんが "素っ頓狂" な歌で場を盛り上げるのだが、台詞を言う威厳のある表情とは打って変わって、ひょうきんな表情は「七人の侍」の菊千代役を彷彿とさせ、見入ってしまう。
(今作撮影時の三船さんは29~30歳ぐらいで、この貫禄は現代の40歳以上の名優でもなかなか出せない)

終盤、やっと来た "にしん" の網上げシーンは驚愕するほど大漁で、本当に魚(にしん)が来るまで機を伺うしか撮影出来なかったはずの描写は見事。

作品全体での評価は、他の両コンビの名作と比較すると落ちる事は否めないが、初期の三船敏郎の知る上で、ファンなら十分価値がある作品。
黒澤明脚本、谷口千吉監督、そして三船敏郎と月形龍之介出演による豪華な作品。

豪快な三船敏郎とネチネチした月形龍之介の演技合戦が見所でもある。

漁師頭の九兵衛は安い給料で漁師を集める。

その中には、かつて九兵衛に置き去りにされた上、船まで奪われたジャコ萬という男がいた。

彼は、お金が欲しいのでは無く、かつての自分のように九兵衛を苦しめると言う。

そのような状況の中、九兵衛の息子である鉄が合流する…

いかにも器が大きそうな三船や、どこかミステリアスで魅力のある月形龍之介、そして藤原釜足等、とにかく皆キャラが良い。

壮絶な漁や、三船と月形龍之介の喧嘩等、迫力のあるシーンは見所があった。

ただ、いまいち何を伝いたいのかが分からず、のめり込む程の面白さは無かった。

そこを抑えた上で再鑑賞したら、だいぶ評価が変わりそうな気がする。
『ジャコ萬と鉄』(3.4p)及び『姿三四郎』(3.1p)

 黒澤·本多·谷口という山本嘉次郎門下の親友3人、後の2人は、ゴジラを始めとする怪獣·変身ものや、三船の伝奇冒険滑稽時代劇で、大人に映画館に連れてって貰ったりや、学校での教師企画の上映会で、お馴染みではあったが、黒澤だけは長い間、名前は勿論·その作品も観た事がなかった。が、いざテレビでたまたま観たりすると、谷口だけが1人、後景に下がっていった。『銀嶺の果て』や『赤線基地』らの意欲作もあるが、イマイチ、ジャストミートとはゆかず、スッキリと伝わってくるは、『暁の脱走』『潮騒』くらいか。その後者も含め、後にリメイクされるような作品や、逆に喜八の軍記ものを引継いだような、会社や世の流れに従ったような、無個性と言われかねない作品が多いのも確か。しかし、編集に長けていなくて、黒澤の助力を仰ぐこともある、この人は、ショットの新鮮な力を掴み·放つ能力はあるのかもしれない。後の深作版に比べても、作品としては弱くも、随所に光が認められる。その映画を超えた輝きを集約してゆけば、とも思うが全体の中の部分という感覚は掴めない人なのだろう。
 今回観たプリントは、そういった個性に合い、モノクロの弾けや強度が特によく出てた。北海道ニシン漁の説明とその実際のロッセリーニの名作匹敵のディティール積みとつや、意固地な親方進藤のキャラとCU表情の得も言われぬ無言見詰め、賃金の低さに燻る出稼ぎ者らの日常、その中にいて·それを煽る·嘗て親方久蔵に置去りにされ瀕死の恨みを晴らしに来てる·強者ジャコ万、その停滞を両者を引寄せ·広く高い視点に持ってくのが·戦地から帰還の久蔵の息子の鉄と·理論派だが虚弱で過去を明かさぬ学生上がり、彼らの格闘·牽引·演説の包み上げる力、ジャコ万をひたすら追う女と·鉄の通う教会のピアノ演奏少女の神性の存在、寒風強い港や馬橇の雪原の制御外自然の力、姉とその婿の為にまた離れてく鉄ら、実景·セット·Sプロセスを貫く意気。
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 後の深作リメイクもその脚本をほぼそのまま使わせたという、オリジナルの輝きだが、殆どオリジナルを20余年後になぞった、後の方のも観る。悪くはない。共に黒澤の本。
『姿三四郎』リメイクは、戦前黒澤前後編を繋げた脚本、宝塚映画=黒沢プロ製作作品で、モノクロスコープ、修道館側=加山·青木·三船·卜全、柔術(空手)側=雄之助·加東·岡田英·山崎努、女性陣=九重·原知·飯田らで固めてるも、前3/5はついこないだオリジナルを見たばかりで、精神真髄や品格や出発点無心戻り、らが繰返され、タッチはスマートだが起点や極めが弱く、望遠めのクルクルと内で纏まるアクション絡め、進む。味気ないなぁと思ったると、『続~』にあたる後半2/5は、前に観たのが40数年前のせいもあり、単純に楽しめた。プロレス部分はなくも、檜垣三兄弟の複雑な味わいはオリジナルに近く、「何故、敵多く、憎まれるのか」と藤田ならともかく、加山が言うと不条理でそこから、望遠コンパクト闘い·稽古や、取分けスコープのトゥショット等飾り無い長めが·音楽も高め、友情や恋の情を張り詰める(「もうこの街を見るのも最後かも。いや、やはり幌を、寒いかも」~小夜との出くわしに人力車上の檜垣)。
 演劇と同じに、リメイクなどとは言わず·同じ磨かれた脚本·戯曲で、フレキシブルに創るも普通の演出家(例えばマキノやヒッチ·ルビッチみたいな)、観る側も、その時代対応·新機軸を、もっと普通に楽しむ、が原典隠さず·当たり前になると、このメディアも成熟してきた証しとなる気もする。

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