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マイライフ・アズ・ア・ドッグのRのレビュー・感想・評価

4.4
久々に見てみました。5回目かな? 思いがけず安く手に入ったBlu-rayで何度か見てて、見るたびに素晴らしいなぁと思うんやけど、すぐに良さを忘れてしまって、やっぱこれ要らねんじゃね? 売っ払っちまう前にもう一回だけ見とくかー、と思って見るとやっぱ素晴らしい。好きだ。というわけで、金輪際の決定! これはキープ! 今回は感想をきちんと書いておこう。主人公は元気いっぱい愛くるしい12歳の少年イングマル。お父さんは海外の出張でうちに帰って来れ(ないということになってるだけっぽい、本当は出て行ったのかも)ず、お母さんは病気で絶対安静にしとかないといけない。けど、意地悪なお兄ちゃんと悶着起こしたり、近所でも問題を起こしたりと、お母さんを怒らせ泣かせてばかり。そのせいでいよいよ病状が悪化。遂には入院が決まってしまう。イングマルと大の仲良しの愛犬シッカンは施設に預けられ、兄弟はバラバラで親類の家に預けられることに。それでも子どもらしい無邪気なタフさで、もっともっと悲惨な人たちがいて、彼らと比べたらまだ僕の方がマシだ、と自分に言い聞かせながら、その状況を受け入れる。そんなイングマルが到着するのは小さな田舎町。みんなフレンドリーで優しくて暖かいけど、どっかネジの外れたおかしな人たちで、彼らにまじって大切な成長期を過ごす様子が、愛のこもった視線で描かれていく。はじめは、この少年の悲しみと喜びが典型的な感傷ドラマとして描かれていくのだろう、と予測する人が多いでありましょうが、全然そんなんと違いまして、性的な内容ばかり。少年の成長ってか、むしろ性の目覚め、みたいな感じ。最初、階下で寝たきりの死にかけ老人に、本を読み聞かせてくれ、と頼まれて音読するのが、雑誌の下着の広告欄。難しい言葉をたどたどしく読むイングマルと、何や知らん下着姿の女を妄想して興奮する爺さんの様子おかし過ぎ!笑 お次は、工場で働いてる(田舎においては最高レベルの)ブロンド美女が町の画家のおっさん宅でヌードモデルやらなあかんねんけど、一人やと不安やからついて来てぇな、とお願いされて、思わずわくわくイングマル! さらに、もう一人は、サッカーチームの花形選手、めちゃめちゃイケメンな男子かと思いつつ、実はチームにいるために男のフリしてる女の子。ところが年頃の彼女は胸が出てきてしまってて、どうしよう、チームやめさせられちゃう、と悩んでる、ってことを知るイングマル……と、そうこうしてると、お母さんの具合が更に悪くなり……多感な年頃に、生と死と性に向き合うイングマル君の、まっすぐな瞳と表情豊かなワンコみたいな愛くるしさがキュート過ぎてメロメロ! 現実が受け入れられないつらさに達すると、耳を塞いで大声を出したり、突然その場から逃げ出したり、スプートニク号に入れられて宇宙船の中で餓死したライカ犬に思いを馳せたり、何かね、そうやって生きていくしかないんだよ、って諦観してるようにも見えるのがほの悲しい。けどやっぱ子どもやから切り替えも速いし、エネルギーに溢れてて、様々なエピソードがとにかく微笑ましい。個人的にはイングマルとブロンド美女のほのかな恋愛関係がすごーくよかった。あと、サッカー少女が、イケメンにも見えるし、美女にも見えるしの完璧なキャスティングで、膨らみかけた乳をキッチリ見せているため幼児ポルノ批判もあるようだが、この映画で描かれるセックスにいやらしさはひとかけらもない。爽やかなプレ思春期のきらめきでいっぱいだ。まぁそれに興奮するおっさん達もいるのでしょうが…😓そんなこんながユーモラスにほのぼの描かれていくのを見てると、幼年期をノスタルジックに描いたいくつかの香り高いヨーロッパの名作を思い出したり、あと、自分の田舎での暮らしや、おばあちゃん達や、ヘンテコなご近所さん達を思い出し、今ごろあの人たちはどうてるんだろう、もう死んだのかな、と思わず思いを馳せてしまう。とても上質で品のある名作でした。映像もきれい!
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