舞台はベルリン壁崩壊の数年前の東ドイツ。強力な一党独裁体制の中、そこには想像を絶する監視国家の実態があった。。
2006年にドイツで公開後、翌年にはアカデミー外国映画賞を受賞。当時33才のドナースマルク監督が、壁崩壊後、長い間口を閉ざされてきた東ドイツの実態を長期取材を通して作品化。
当時の東ドイツは、社会主義統一党により支配され、壁崩壊までの18年間はホーネッカー議長の独裁体制であった。私自身も東ドイツに関する情報が極端に少なく、興味を惹かれ、作品に没頭してしまいました。
理想と欲望
主人公のヴィースラー大尉は、社会主義の理想を掲げた党に忠実な人物。国家保安省(シュタージ)に属し、反体制的な思想を持つ人物を監視し尋問する日々。
そんなヴィースラーが舞台芸術家ドライマンと女優クリスタを監視する事で、自身の価値観が揺さぶられていく様子が描かれる。
自分の信じた党は、理想を忘れ利権と欲望にまみれ堕落していき、一方のドライマンとクリスタの普遍的な愛、芸術家としての純粋な理想に触れ、自身の良心が揺らいでいく。
全体主義の闇
ヴィースラーの無機質な表情が、全体主義を象徴し、その恐ろしさ増長させる。
人間はそんなに強くない。理想を掲げて反旗を翻せる人は一握り。出る杭は打たれ、そして大半の人間は全体の空気を読み、自分の意見を押し殺す。
私は決してその事が悪いとは思わない。誰しも傷つきたくないから。。大事なのは歴史を学び、私達が社会を監視する事。いつの時代も犠牲になるのはひとり人間。。これは現代日本にも通じる話だと思う。
今の自分は心から善い選択をしているか。そして自分をフラットに疑ってみる事の大切さ。そんな事を改めて考えさせられる骨太な作品でした。お勧めです!