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ルナシーのhorahukiのレビュー・感想・評価

ルナシー(2005年製作の映画)
3.6
動きまわる生肉!!😱

『早すぎた埋葬』→『タール博士とフェザー教授の療法』の2作のポー作品を超絶ブラックなユーモアで繋ぎ合わせて魔改造した作風が最高に笑えて恐怖な精神病院もの。「これは芸術じゃなくてホラーよ」とわざわざ監督が念押ししてくるだけあって確かにホラーだったけど、めちゃくちゃアートみも感じたのは私だけ?

🥩🥩🥩〜って感じでストップモーションで踊り狂う生肉たちが最強にキモい!😱あっちへ行ったりこっちへ行ったり、登ったり降りたり。スーパーのトレーに入った生肉はラップ越しに呼吸するかのように蠢き、タンは人間のようにグロテスクに絡み合う…というか人間なんだけど!🤣これ本物使ってるよね?どれだけ無駄にしたんだろ…😂

原作ありきを逆手にとった意外性ある展開が楽しい!タールとフェザー(全身にタールを塗って鳥の羽で隙間なく覆ったやつ)をビジュアル的にそのまんまやってたのもサイコーだった!原作クライマックスでのネタバラシを本作では最初の方にやっちゃうので、徐々に高まっていく違和感と見え方が180度変わってしまうことによる滑稽さの露呈って部分では弱かったけれど、そこを別アプローチにより直接的に現実世界として叩きつけてくる。

同原作のモクテズマ『ター博士の拷問地下牢』は当時のメキシコにおける情勢に根ざしていることもあり、「療法」が体制(規範)側による価値観の上塗り(タールとフェザー)によって踊らされる社会の現実を投影し、それをあるがままの「地獄」だと描いたのに対し、本作では規範と心的本質の対立構造を浮かび上がらせ規範の重要性を押し出しつつも、規範により対外的には覆い隠されただけのマヤカシの現実もまた「地獄」であると説くというトリアー的な図式になっている。言い換えれば本作はモクテズマビギニング。

侯爵と主人公それぞれが母親の死という「過去」を抱えていて、それ故に心的な牢獄に閉じ込められている。その深層へと分け入っていく過程において、未来と過去の対立を象徴する存在がアプローチとして同義となってしまう(履き違えてしまう)。本作の顛末は過去を未来と履き違えた故の悪夢と捉えることもできるわけで、その履き違えにこそ彼らの心的な恐怖の根源と逃避反応が見て取れる。そのパーソナルな外観だけの安心へと傾倒したリアクションを社会へと拡げることでリンクさせる本作のアプローチは昨日の『欲望』と結構似てる気がする😂
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