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時計じかけのオレンジのNeCoのネタバレレビュー・内容・結末

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

珈琲でも煙草でもない、ロングタンブラーに入ったミルク、片目だけバチバチの付け睫毛、独特な髪型に載せる上品なハット、打って変わって下品な行動
初手は未知に対する嫌悪感と恐怖に渦巻けど、見終わる頃には彼の虜

ガラスで人殴ってみる、人の善意を全力で無下にしてみる、singing in the rainのリズムに合わせて強姦する、造語の嵐、仲間内だけで通じるライトライトライト、フジツボみたいなシーツにベット下には蛇、カセットテープで聞く第九、キリストを唯一神どころか何人も並べ立たせ、釘で固定しダンスさせる

全部理解できないので途中で放棄した、そういうもんだと思って見る、違和感を並び立てるので精一杯になる

ひとつ確実なのは、彼は終始興味本位で動いてる、恥も見聞も皆無
性描写は露骨だけど、一番面白いのはまぐわりタイムプラス、奇を衒うどころじゃない、奇、そのもの
こう、なんというか無意識的に周りがリーダーに仕立て上げちゃうような絶対的にネジの飛んでる人間っているんだよなと強く感じた

人生の転機点はいつだって、ねこねこねこねこ
死亡シーンに前衛的なイラストをぶち込む感性然り、無機質な部屋で殴られて、壁に寄っかかりながら美男が血流してる描写とかかなり前衛的で良いよね
ムショ入りでは素直にサー!するのおもろい、健やかな笑顔でノーサー!

あとはなによりキリスト教の解釈が奇抜
自身をキリスト側じゃなくて鞭打ち側に置くとは
色欲求めて聖書読むサイコパスっぷりがユニーク
瞑想=妄想なんだろうな、雑で完璧な宗教観が堪らん

比較的有名なシーンだけど、瞬き禁止(物理)はやはり印象的
目かっぴらいて口角上げて映画見る表情が作品内で一番かわいい
彼が言う映像から逃げられないという感覚はまだ味わったことがない、てか多分今後そう巡り合うことはない

非行三昧、所謂「ホラーショー」が快感であったはずの彼がそれに対して徐々に吐き気を伴うさま、悪への傾斜をパラドックスとして善に傾くという発想は非常に面白い
非行は妨げても道徳的な判断能力に欠ける、それは更生か?
動機や倫理観よりも犯罪抑制が優先なのか?
ハンムラビ法典は正義か?
地味に啓発的な問題を掲示してくるのがミソ

怒涛の悪行による報い回収シリーズ、トラウマ体験による偶発的な音楽への吐き気、デカコンポとビリヤード、自殺失敗、間抜けなeat me お見舞いフルーツ

悪行真っ盛りのときも、矯正あとも、自殺を図ったあとも、妙にしんみりしないで快活なのが根っから飛んでる感じする
自殺を図ったあと、洗脳から解かれるんだけど、最終的に国家も隠蔽しようとして、最高のケアを提供します^_^なのが面白い
相手の意図を感じ取って、大臣に飯を食わせてもらうのとかもニヒルだよね
楽に楽しく生きるためなら、何度でも利用されていいし媚び諂ってやる姿勢、見習いたい

ラストも彼で言うところの「完治」を遂げて、雪の中で女性とセックスしてるところを上流階級の人間に見せびらかす描写なの壊れに壊れてて謎の爽快感すらある
彼らしい、と安心感すら芽生えてしまう
そしてエンドロールがsinging in the rainなの、吹くかと思った

キューブリックが煽る不安感は自信の持つ常識が無碍にされるどころか、そんなものはなから存在しなかったかのように振る舞われるところだと思う
突然言葉の通じない価値観の異なる異国に飛ばされたような漠然とした恐怖を突っついてくるのが巧いのだなと
ジャケットが目玉親父の多くの人間が耳にしたことはあるだろうタイトル、時計じかけのオレンジ
タイトルの意味を探るべく見てみてほしい
多分なんもわかんないから、そのわかんないに浸ろう
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