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寒い国から帰ったスパイのbackpackerのレビュー・感想・評価

寒い国から帰ったスパイ(1965年製作の映画)
4.0
一転、二転、三転。

007のような華やかさなど微塵もない、実に泥臭い傑作スパイ映画です。
これこそが真実のスパイの有り様だと思います。

東ドイツ高官にして、イギリスのスパイ・リーメックの死から始まり、死の原因になった男ムントを失脚させるべく、主人公リーマスは単身東ドイツへ潜入。
ムントを嫌う副官フィードラーに嘘の情報を伝え、ついに査問会が開かれることになるが……。

ラストの壁越えシーン。
救いも慈悲もあったもんじゃない、非情の世界に生きるスパイが、とても悲しい。

リーマスが語る、スパイとはどういう存在かという話。
「神やマルクスの言葉に逆らう哲学者か?」「違う」
「ただ下品で惨めな人間だ」
「正しき修道士だとでも思ったか?」
スパイという存在のむなしい役割を訴てくる辛辣で現実的なお言葉でした。
華美で魅力的なスパイ像とはかけ離れ、しがらみに囚われた諜報員の世界は、暗く容赦ないものなのでしょうね。

無表情で、眼力があり、淡白な会話を延々続ける主人公の、少し悲壮感漂う演技が素晴らしい一作でした。
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