茜

柔らかい殻の茜のレビュー・感想・評価

柔らかい殻(1990年製作の映画)
3.5
カルト的な人気を誇る映画と紹介されていたため興味が沸いて観てみました。
冒頭の綺麗な金色畑の景色の中で、少年たちがカエルを膨らませて爆発させる悪戯を仕掛けるという残酷な描写。
この時点で独特な世界に惹き込まれました。

監督は元々画家の方だそうで、確かに映画内の景色はとても絵的で美しいです。
しかしそれに反して、出てくる大人達は何かしら心身のバランスが崩れている。
少年に性的悪戯をした過去を持つ父親、ヒステリックで情緒不安定な母親、戦争から帰還して被ばくしている兄、
夫を亡くして心を病んだ未亡人、息子の友人である幼い主人公に対して「お前は罪で出来ている!」と叫ぶ母親…。
そんな大人たちに囲まれて閉鎖的な田舎で育つ主人公の少年が、死や性や大人の汚さ醜さにまみれて成長していく姿が、とても息苦しいし切ない。

一切汚れのない人間なんて存在しないように、大人になることって、やはり何かしらの罪を背負って汚れていくことなのかもしれません。
でも主人公の少年が幼くして背負ってしまったものは余りにも重た過ぎて、先を考えると明るく笑えない。
茜