茜

バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>の茜のレビュー・感想・評価

4.2
久しぶりにほんわかした映画も。
こういうのんびりした映画ってあまり得意じゃないんですけど、これは良かった。

出て来る人は皆キャラが立っていて強い個性があるのに、本当にそこで暮らしている人々のように見えて不思議と親しみが持てる。
いつも怒ってるバグダット・カフェの女主人も、バンダナ巻いたカフェ常連のおじさんも、チラチラ現れる彫師の女も登場人物も皆愉快。
三つ編みのインディアンスタイルな警察官の人が一番気になっちゃうキャラで可愛かったです。

主人公のジャスミンは特に存在が際立ってて、明らかに「異国から来た人」オーラがむんむん。
太っちょで化粧も濃くて、洋服も特徴的で、何をしてた人なのか素性も全く分からんのだけど、そこも魅力的。
赤ちゃんに構いたがったり、子供はいないって落ち込んだ様子で言うシーンもあるんだけど、過去の話は全く語られない。
そうして奥深くに触れないところが、またこの映画の優しいところでもある。

異国から来た旅行者ジャスミンと、寂れて汚いバグダッドカフェとそこに集まる人々の交流と変化を淡々と見せる映画で、特別大きな事件や出来事が起こる訳ではないんだけど、そんなのどかさが良い。
カフェ周辺の広大な景色と、そこに流れる音楽や他愛もない会話とか、こういう毎日っていいなぁなんて漠然と思う。
映画の最初と最後ではジャスミンや周囲の人々の表情が180度違うのも印象的で、ジャスミンが真っ白なワンピースが汚れるのを気にもせず砂の上にベタンと座り込むシーンは「おおらかさ」みたいな心の余裕を表現してるのかな何て思った。

鑑賞後は主題歌の「Calling You」が頭から離れなくなる。
茜