短文感想 70点
割と面白かった。読み方は「おおがらす」。エドガー・アラン・ポーの詩「大鴉」から着想を得たものであり、悪趣味の医師が復讐のために動き、拷問や殺戮を行なっていくという話。当時のホラー映画界のスターであるベラ・ルゴシとボリス・カーロフが共演しているのが興味深い。60分という短い尺で、なかなか面白い展開を見せてくれたのは良かったです。それにしてもボリス・カーロフは今回でも手術で醜い顔にされているため気の毒です。。

• #tmy整理ホラー
• #100分以下

お前を拷問することで
私は苦痛から解放される…

命を救った女（婚約者あり）に惚れちゃったから、「俺は恩人だぞ！」とか言って略奪婚しようとするも、女の父親に猛反対されたんで、父親（＋α）に拷問して憂さ晴らししようとする変態ルゴシを描いた顔芸ホラー。

タイトル通りポー作品の映画化。同じく『大鴉』を原作に持つコーマンの『忍者と悪女』を見たのでこちらも見てみたら内容全然違ってて笑った。両作には約30年の間が空いてるにもかかわらず、どちらの作品でも主役級を演じてるボリスカーロフのレジェンドっぷりが凄い！

医者を引退したことを理由に手術を引き受けるのを頑なに断ってたのに、他の医者に「先生しかできないんです！」って言われたら良い気分になってアッサリ引き受けちゃうめちゃんこナルシストなルゴシ先生。

ポーの作品に傾倒していて、『大鴉』で歌われたレノーアを失った苦しさを自分とシンクロさせ、ポーを天才だと褒め称える言葉がポーを通して自身に向けられるように意図的に仕向けてくるガチっぷり。

「俺は拷問が好きだ！人がどれだけの苦痛に耐えられるかに興味があって医者になった」とか普通に言っちゃうヤベェやつなんだけど、自分を人より高次の存在だという考えを当たり前の前提とする貴族然とした傲慢さは普通なら滑稽にしか映らないけど、ルゴシという俳優だからこそな圧倒的説得力を持たせてしまってるのが凄い！

カーロフはルゴシに顔を醜く変えられてしまう犯罪者の男を演じているのですが、他の方も指摘されてるようにフランケンシュタインの怪物と同じような呻き声を上げながら暴れるのか面白いし、人を貶めてでも自分の利益を利己的に追求する彼の中に、ほんの少しだけ残っている善の心が贖罪的に顔を覗かせるような温かさが圧倒的な悪に支配された屋敷の中では際立って光って感じられました。

顔面半分麻痺したみたいな風貌になってしまったカーロフを見て悲鳴をあげて逃げ惑うヒロインとか、汚物を見るかのように蔑んだ目線を向ける善人側の人々からは善の心なんて全く感じなかったし、人生を賭した行動に対しても上の立場からの偽善的施しのような態度しか取れない彼らも等しく悪なのだろうなと感じたし、まだわかりやすい悪として振る舞うルゴシの方が幾分かマシなのではないかと考えてしまう。カーロフ自体も悪人なわけだけど、彼の中に生まれたものは本作の誰よりも純粋な善なのだろうなって思いました。

• #ホラー映画と怖い映画

「"死"そのものが守り神なのだよ」


　エドガー・アラン・ポーの同名詩『大鴉』から着想を得た作品で、ポーに取り憑かれたマッドサイエンティストが脱獄犯を利用して恐ろしい計画を実行しようとする物語。

　60分という短い本編ということもあり、主人公がひたひたと狂気の淵に陥っていく様をテンポよく描写。まさにマッドサイエンティストの代名詞ことフランケンシュタイン博士を彷彿とさせます。そして彼によって顔を変えられた脱獄犯も怪物を思わせる完成度。

　"復讐"が作品のテーマであり、公開当時はセンシティブな内容で、イギリスでは上映禁止になったりだとか。たしかにあの拷問器具を見た時は『SAW5』のトラウマが蘇りました。もう少し展開が欲しい一面もありましたが、観始めたら一瞬で終わるほどコンパクトなので、隙間時間にオススメしたいホラー映画。

　映像と同化している大鴉の置物の影が芸術点高い。

2024.6.17 初鑑賞

• #盆栽の1930年代ホラー