茜

サンタ・サングレ/聖なる血の茜のレビュー・感想・評価

4.0
ホドロフスキーの映画をちゃんと理解出来た事がなかったけど、意外なほど分かりやすくてホッとした。
なるほど、彼が初めて商業映画を意識して撮った作品なんですねぇ…。

夫の浮気に激高した妻が夫の下半身に硫酸をかけ、そんな夫は怒りの末に妻の両腕を切り取り自殺する。
そんな現場を一部始終目撃してしまい精神を病んでしまった彼らの息子。
時が経ち成長した彼は、両腕を失った母親の声に導かれ、病院を抜け出して恐ろしい殺人に手を染める。

お話の舞台はサーカス団、しかも監督はホドロフスキーというだけあって、商業映画を意識したといっても世界観は非常にシュール。
父親の不倫相手が入れ墨だらけの奇抜な女だったり、小人やダウン症の人々が出てきたり、母親の進行する宗教が異様だったりと、やはりカルト映画的な雰囲気は損なわない。

スラッシャーの要素がありつつも、中身は解放と愛のお話だと思います。
主人公と聾唖の少女アルマが、言葉はなくとも身振り手振りで心を通わせるシーンはとても温かい気持ちになる。
おどろおどろしい世界の中で、アルマの存在は天使のようでもあり一筋の光のように思える。
自身のトラウマや呪縛から抜け出せず自らの手を血に染める主人公を、この映画は決して見放さない。
絶望のどん底に叩き落された人間にも救いの手は差し伸べられるし、それは逃れられない血縁すらも超える力がある。
とても美しくて愛おしい話。めちゃくちゃ好き。
茜