87年イラン、傑作。
鑑賞者を童心に返す非の打ち所がない完璧な描写力。
書き取りの宿題をノートにしてこなかったことでこっぴどく叱られ、次忘れたら退学とまで脅された隣の席の友だち。
なのにアハマッドは、その友だちのノートを間違って持ち帰ってしまったことに気付く。このままでは僕のせいで友だちは退学になってしまう、絶対返しに行かなくちゃ·····
友だちのうちは遠くの地域だということしか分からない。お母さんには、友だちのうちに遊びに行くなら宿題をやってパンを買いに行ってからと言いくるめられ、事情をうまく説明できない。目を盗んで抜け出しても、すれ違いとたらい回しのジグザグ道。
見つからない友だち、暮れていく日。罪悪感で歪む表情と焦燥感で速まる足どり。
今作は、大人にとってはたわいもない話に終始しているのだが、観ている間にいつしかアハマッドと同じ気持ちになり、まるで明日世界が終わってしまうかのような大きな話に感じられて、胸が締めつけられる。ラストのシーケンスも短くシンプルながら切れ味鮮やか。
おみごとのひとこと。