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エンジェルのchikichikiのレビュー・感想・評価

エンジェル(2007年製作の映画)
3.6
 20世紀初頭のイングランドの下町ノーリーで、食料品店を経営する母と二人暮らしをしている主人公のエンジェル。
 幼い頃より、上流階級の生活に強い憧れを抱き、自身の思い描く妄想世界だけを見続けると共に、その類稀な想像力と文才を持って、一躍人気作家となった女性の一代記!!

(エリザベス・テイラーというイギリスの女流作家さんがモデルだそうで…)


 煌びやかな衣装やこだわりを感じせる美術セット、古き良きハリウッド映画のスタイルを模して作った美しい映像と音楽を担当した、フィリップ・ロンビによるドリーミーなスコアによって、黄金期のハリウッド映画的な雰囲気が感じられたのがとっても良かったです!!

 序盤こそ、如何にも"世間知らずなお嬢ちゃん"と言った感じの主人公に「正直、苦手だわこの子。」なんて思っていたのですが…笑

 映画が進むにつれ、そのトゲトゲしさの反面、時折見せる表情や言動がとってもチャーミングでなんだか憎めない。
 

 いかなる厳しい現実を叩きつけられようとも、己が作り出した世界を頑なに守り続ける彼女の痛ましさ。

 時代錯誤で、TPO完全無視な艶やかで美しい衣装、映画の虚構が強調されるかの様な合成処理された背景、また彼女の恋人に対する愛ですら、独りよがりなモノに過ぎず分かち合う事すら敵わない。
 などなど…虚構で抜き固められ、些細な事で弾けてしまいそうな、彼女思い描く空想世界の美しさがなんとも哀れで切ない。

 そして、そんな随所に散りばめられた皮肉の中でも、エンジェル(Angel )とアンジェリカ(Angelica)の対比にはかなりキツいものがありました。笑

 しかし、それと対をなす様に発行人の妻・ハーマイオニー(シャーロット・ランプリング)やノラ(ルーシー・ラッセル)等のキャラクターが配置される事によって、非常に冷徹で、辛辣な物語の中でも、何処か一歩引いたところで見守る様な温かみが感じられる作品でした!!


 ただ、オゾン作品としてはちょっと"変わり種"な印象の作品なので、入門編としてはまずお勧めしません!笑
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