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怪談蛇女のhorahukiのレビュー・感想・評価

怪談蛇女(1968年製作の映画)
3.6
地主に家を取られたり酷い仕打ちを受けた小作人の一家が、幽霊となり地主たちに復讐する邦画ホラー。

大好きな中川信夫監督の怪談なのですが、私的にはそこまでハマりませんでした…。

民衆を虐げる県内きっての大地主に対して、何も出来ない現実を脱し、死後の世界からのカウンターをかますという、怪談ものの常套手段を取り入れた作品なのですが、前半の虐げられてる描写が腑に落ちず、肝心のカウンターが私的にはさほどスカッとしなかったんですよね。

事の始まりは主人公一家の父親が地主に対して負っている多額の借金。それがすでに返済できない状況に陥っているところから物語が始まります。それで地主に家を取り上げられ、妻と娘は地主のところで無給(給料は全部借金の返済にあてられる)で10年働かされることになる。

担保権があったのかは知りませんが、多額の借金のために自宅を取り上げられるのは、可哀想だけどやむを得ないところがあるし、地主側もその後住み込みでの働き口を与えてるわけだから最低限の生活には責任をもっている。地主のところは一日16時間労働という、完璧にブラック企業なわけですが、他にも多数働いてる人もいて主人公のみが酷い仕打ちを受けてるわけではないし、割と同僚たちが優しくて心配してくれてるのでそこまでの悲愴感がない。その上、働き始めて数日で主人公一家は横領事件を起こしちゃうから擁護できない…。普通だったら警察に突き出されるところだけど、土を口の中に一回だけ入れられて、勤務場所が変更になるだけで許してもらえるという甘々上司。

その中でレイプと病院に連れていかないことだけはクソ中のクソだと思うけど、それまでがあまり非道な扱いとも思えず、むしろかなり問題のある一家なように思えて、あくまで復讐譚としてはそこまで肩入れできない。

ただ、本作の幽霊は地主側親子の心の中にほんの少しだけ残ってる善の心が見せた幻だと捉えると全て合点が行く。本作の幽霊は、生前の死が迫った時の姿で現れ、地主に謝る行動を繰り返す。これは復讐として考えるよりも、地主側が自分の責任で他者を死に追いやってしまったことを心の奥では責任を感じているところがあって、その心が見せてる幻なのではないか。そうすると地主側への謝罪を繰り返す幽霊というのも腑に落ちる。地主側の自責の念が見せているので、死の間際に地主に対してした行動が幽霊の行動に反映されてるように思えるんですよね。そしてそれは蛇に結びつく。

そしてそう考えると、前半、主人公一家側の悲惨さに重きを置かなかった演出も納得がいく。本作の主人公は実は地主側であり、自責の念により破滅する姿を描いたサイコホラーだとも取れる。そしてそれは強者に理不尽に虐げられる弱者の願いでもあるし、怪談の本質でもある。そう考えると本作は傑作といっても良い作品だと思います。

クライマックスの怒涛の恐怖演出ラッシュはさすがの中川監督だし、ラストシーンの旅立ちも素晴らしい。冒頭から復讐譚として見ていたせいで今回はあまりハマりませんでしたが、最鑑賞したらほぼ間違いなくハマると思います。やっぱり中川監督は凄い!

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