マサキシンペイ

アモーレス・ペロスのマサキシンペイのレビュー・感想・評価

アモーレス・ペロス(1999年製作の映画)
3.9
メキシコ出身のイニャリトゥ監督の処女作。初期の段階から、映像感覚と物語の構成力に秀でた、クレバーな映画監督だなぁ、と改めて認識した。悲劇を描くことが多い点でも大変僕の好みの監督だ。
この頃から既に、バラバラの時間軸かつ複数の視点から見た断片的な映像を繋ぎ合わせた、スリリングな構成手法が確立されている。
繋がりが見えないシーンの連続が織り成す、静と動の緩急がまず感覚的に面白く、展開が進むにつれ、それが伏線として機能し論理的に全体を繋げ、物語の豊かな魅力を演出している。150分間、華麗にシーケンスがかみ合い連動し、緊張感を持続させ、全くダレない。非常に端整な作りだ。

今作においては、豊かな色彩感覚も強く感じられた。メキシコシティの雑多な街並みが画として単純に美しいし、描く人物の経済状況に伴う生活環境や、場面に対する精神状態すらも、画面の色調を巧みに使い分けて表現しているように見て取れる。特にシリアスなやり取りの場面では全体に緑がかった色調になることが多く、その質感が感傷的な雰囲気にマッチしている。

結末に希望的な余韻こそ残さないが、後の「21g」や「バベル」程、全く救いの余地がありえないようなところまでは追い込まれないので、イニャリトゥ作品に触れる一作目としてオススメできる。
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