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姦婦の生き埋葬のhorahukiのレビュー・感想・評価

姦婦の生き埋葬(1962年製作の映画)
3.4
もしも生きたまま埋葬されたら…
生きたまま埋葬されちゃう妄想に憑かれたオッサンがあの手この手で対策を練りまくるサイコホラー。

AIPのコーマン×ポーシリーズ第3弾。
シリーズでは毎回のように出演しているヴィンセントプライスが唯一出演していない作品です。 AIPとコーマン監督の間に色々とあったようで、ヴィンセントプライスの不在は残念だけど、レイミランドも良い味出してました!

あらすじ…
実父を生きたまま埋葬してしまったと思い続けているガイは自身もいつかそんな目にあうのではないかと恐れるあまり精神を病んでいた。というのも、父親は硬直症で、それが自分にも遺伝してるのではないかと考えていたからだった。それを全て受け入れてくれる妻を得て一緒に暮らしていたのだが、どうしても生き埋葬の恐怖から逃れられず…。

生き埋葬については、少し前に見た同シリーズの『恐怖の振子』でも取り入れられていましたが、コーマン監督のお気に入りだったのかな。同時期の『シェラ・デ・コブレの幽霊』でも同じ要素があったし、当時のゴシックホラーの定番のようなものだったのかもしれません。

硬直症というのは、生きているのに心停止して瞳孔が開き死んだようになってしまう病気。硬直症を死んだと間違えられて埋葬されないように、自分で何重にも棺から脱出する策を練るとこがアホらしくて面白い。まず簡単操作で開く棺。棺の中にも中からぶっ壊せるようなハンマーとか色々仕込むという手のこみよう。さらには棺を納める納骨堂?にも三重にも四重にも脱出手段を確保するという徹底っぷり。しかも結局全部役に立たないというね(-。-;

あまりにも生き埋葬に憑かれてしまい、ひとつの事柄に対する恐怖や不安のために人生の輝きを失ってしまい、生きながらにして死人のようになってしまったガイの生活を悲愴感たっぷりに描いている。作中のセリフでもありましたが、それこそ棺の中で暮らしているのと同じ。

そして物語は意外な方向へと進んでいくのですが、その転換が正直あまり上手くいってるとは思えず、チョイ残念でした。ただ、コーマン監督らしい霧が終始立ち込める墓地だったり赤一色の装飾に彩られた寝室だったりゴシックムード溢れる空間演出はさすがでめちゃくちゃ好み。美術担当がダニエルホラーという安定感。

単純なお話ではありますが、この時代でしか出せない怪奇な雰囲気が抜群なおもしろい作品でした。やっぱりポーシリーズのロジャーコーマン監督は良いですね。
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