円月殺法を得意とする浪人剣士の活躍を描いた時代劇「眠狂四郎」シリーズの第二弾。　
原作は柴田錬三郎の小説。
市川雷蔵が主演、藤村志保がヒロインを演じ、加藤嘉、久保菜穂子、高田美和らが共演。

眠狂四郎（市川雷蔵）が町でたまたま知り合った老人（加藤嘉）は勘定奉行であった。
勘定奉行は財政立て直しのため様々な改革粛清を行ったため、彼の命を狙う者も少なからずいた。
狂四郎は勘定奉行に関心を持ち、彼を影ながら守る。
一方、将軍家の娘の高姫は夫を失い、驕慢な生活をしていた。
そんな折、不審な女占い師（藤村志保）が二人の前に現れる…　　

狂四郎が様々な剣客と勝負する。
道場破り、5人の刺客、柳生但馬守らと剣を交えるなど見せ場が目白押し。
本シリーズならではの女優陣の競演も楽しめ、謎の女占い師をはじめ、将軍の娘である未亡人、蕎麦屋の看板娘らがストーリーを盛り上げる。
本作では赤毛気味の狂四郎の出生秘話にも少し触れており興味深い。
脇役ながら加藤嘉演じる一見冴えない風貌の老人が、実は幕閣の要職の勘定奉行という設定が面白い。
「俺は俺の好きな方へ行く　ここは天下の往来だからな」
「わしはわしの好きな方に参る　天下の大道だから」　　

2023.2　BS12で鑑賞

• #道場破り
• #勘定奉行
• #女占い師の点てた茶
• #宣教師ヨハネスの妻
• #異国人
• #将軍家の娘
• #蕎麦屋
• #投込み寺
• #松の湯
• #真剣勝負の御前試合

少年との交流から老侍との付き合いに発展してゆく。

狂四郎の人情に酔いしれる作品。

ヨハネスという宣教師が突然出てくるのがご愛嬌☺️

【「昭和の花」、その伝統と継承、眠狂四郎と映画「国宝」について】：
新宿ゴールデン街のシネフィルの友人が、
「眠狂四郎の『勝負』を見ると毎回泣いてしまう」と大絶賛していた。
私も高校生の時にレンタルビデオで見たような記憶があるのだが、
すっかり忘れていたので配信で見た。
非常にクオリティの高いエンタメ作品だった。
さすがに「泣く」ことはなかったけれども。

眠狂四郎シリーズといえば市川雷蔵であるが、
女優陣も旬で、とてもチャーミングで着物が良く似合っているし、
この「勝負」は、わずか83分の尺でありながら
アクションもラブロマンスも「人間の業」も見事に描き切っている。
過不足がない、本当によくできた脚本と構成である。

本作の監督である三隈研次といえば、
雷蔵の眠狂四郎、さらに「剣」三部作だけでなく、
勝新太郎とは「座頭市シリーズ」も手掛けており、
大映映画の黄金期にガッツリと分厚い仕事をしたことで知られるが、
時代劇を愛し、役者を愛していることがよくよく伝わってくる。
「勝負」においても雷蔵に寄り添い、その魅力を見事に引き出している。

さて、眠狂四郎はエンタメとしてよくできたフォーマットであるものの、
雷蔵による眠狂四郎の完成度の高さとインパクトが強すぎるせいか、
その後のリメイクが成功したという評判はなかなか聞かない。
確かに松方弘樹は眠狂四郎としては健康的過ぎるし、一方で田村正和の線の細さはバランスが悪い。
ジュリーが候補に挙がったことを聞いたが、
今度は妖艶すぎて、そのキャスティングが流れたのも理解できる。

また、今見ると雷蔵の殺陣はハッキリ言って上手くはない。
腰が据わっておらず、腕というよりも拳で刀を振りまわしているからだ。
私自身の剣道・居合道の経験からいうと日本刀は言うまでもなく、
竹刀でもあのような振り方で有効打突を打つことはできない。
（もちろん撮影時にジュラルミンを使っていることは理解している）

この点、勝新の殺陣は体幹の強さもあって説得力があるのだが、
それでも雷蔵の殺陣に、もっと言ってしまえば円月殺法に、リアリティを感じさせるのは、雷蔵の目附と呼吸である。
その「間」の取り方とについては、体幹と下半身の頼りなさという剣術においては致命的な弱点を抱えておきながら、それでもリアリティを感じさせるほどの殺気と色気を感じさせる。
まさに「花」であるが、歌舞伎由来なのだろう。

さて「昭和の名作のリメイク」の観点から、
「今ここ」で眠狂四郎をリメイクする場合、誰をキャスティングすべきか。

吉沢亮ではないかと思う。

吉沢亮の「三日月のような美しさ、儚さ」は、雷蔵にも通じる。
また吉沢は剣道の有段者であり、過去のTV番組でパフォーマンスを見たところ、きちんと子供の頃から稽古をしていたこともわかる。
すなわち、自然体で「剣」の体ができている。

映画「国宝」の吉田修一×李サンイルのコンビが、吉沢亮と横浜流星に寄り添い、彼らを追い込み、新たな魅力を引き出した。
これも三隈研次が監督として雷蔵や勝新に寄り添った構図と重なる。
横浜流星も極真空手の黒帯、ボクシングのプロライセンス保有者として「戦う身体と精神」のリアルを背負っている。
眠狂四郎に真正面から対峙する、とても良い敵役になると思う。

ぜひ吉田修一と李サンイルのコンビで眠狂四郎を、
その中でもまずは「勝負」をリメイクして欲しい。

PS/この「勝負」にも見られる、往年の大映映画の勧善懲悪とラブロマンス、展開のスピード感、ヒーローのご都合主義的な逆転劇など、「潔いベタさ」には、近年のインド映画のテイストと熱量も感じさせ、エンタメ映画は大衆のためにあると思わされる。