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モデル連続殺人!のhorahukiのレビュー・感想・評価

モデル連続殺人!(1963年製作の映画)
4.3
あの日記帳を奪いとれ!
死んだ女の日記帳にバラされたくないこと書かれてる同僚たちが、周りの奴らに勘付かれないように水面下で日記帳を巡って争奪戦を繰り広げるジャーロ。

イタリアホラーの父マリオバーヴァ監督作でジャーロの傑作です。 世界初のジャーロは同じくバーヴァの『知りすぎた少女』なわけですが、あっちはモノクロだったので、バーヴァ印の色彩を存分に味わえる本作はまた全然違った魅力があって最高でした♫

あらすじ…
1人の女性モデルが何者かに殺害された。でも同僚の中で悲しんでいるのは1人だけ。ファッションショーの準備のために同僚モデルたちがアクセサリーを探していると、死んだモデルの日記帳が発見される。急にその場にいた全員の視線が日記帳に注がれ、空気が凍りつく。日記帳にはいったい何が記載されているのか。そして日記帳をめぐり、モデルたちがひとりずつ殺されていき…。

オープニングが最高!
赤や青や緑などのビビッドカラーなマネキンとともに主要登場人物をひとりずつクレジットするのがかっこよすぎ!微動だにしない登場人物たちもまるでマネキンのよう。実際に、本作のキャラは全員がマネキンのようなもので主役なんて存在しない。映像センスだけではなく、そういった作品のつくりもサラッとオープニングに盛り込むのがとても良いです。

夜、店の看板が外れて垂れ下がっている。ガンガンと看板が壁に打ち付けられる音と吹き付ける風の音だけが鳴り響く何かが起こりそうな不穏な雰囲気の中、交わされる秘密の会話。そしてその会話の中に出てきた女性の帰宅シーンへと切り替わっていくスムーズさ。

そんで、その殺害シーンもさすがの演出力。暗闇の中、イタリア特有のお洒落な建造物の中を歩いている途中に水面に映る何者かの影。そして向こう側から手前側に歩いてくる女性を前面から捉え、後ろに光、手前に闇という光→闇へと足を踏み入れるような道程を作り出し、照明を暗転させることで一気に殺人が行われる異界へと引きずりこむ。逃げる女性の顔をカメラで捉え、周りを見せないことで緊張感を盛り上げ行われる殺人。そして顔のない黒づくめの殺人鬼。バーヴァ作品は毎回冒頭で一気に引き込まれますね。

そこからは日記をキーアイテムだと観客に印象付けたうえでのサスペンス。煌びやかなモデルたちの楽屋で錯綜する黒い思惑。誰もが表に出さずに日記を気にかけているという水面下でのスリル。

赤、青、緑、ピンクなどリアリティ度外視のカラフルな照明を次々に切り替えることで古物商のお店を不穏な雰囲気漂う異界へと作り変える手法は最高にテンション上がるし、その後、照明の明るさを急に落とすことで危機感を急速に盛り上げるのも良き。暗闇の中で、非日常的色彩のライトが明滅する状況ってここまで気味が悪いのかと感動しました。この色彩感覚はさすがのバーヴァですが、やっぱりアルジェントはバーヴァに強い影響を受けてんのが良くわかります。

そんでジャーロの魅力は残虐な殺人。本作は血が飛び出たりとかはないんですけど、殺害シーンはなかなかエグい。ほかにどんな用途があるのかわかんない釘バットみたいので顔殴ったり、真っ赤になるまで熱した鉄?に顔を押し付けたり。それほど多いわけではないですが、ひとつひとつが印象的です。

本作はマジで主人公がいないので物語的な魅力とか深みとかは全くないんですけど、各シーンにウットリしてしまう素晴らしい作品でした。やっぱりイタリアのホラーって面白い!
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