「永遠の人」と並ぶ胸くそ白黒映画。
激しい訛りと、声より大きいおどろおどろしいメロディーによって、終始台詞が聞き取りにくい。
途中、内輪すぎて若干ダレる。
それでも最後まで観させてしまう力強さがあり。
音声が聞き取りにくいからこその、リアル感。
観客のことを考えない喋り方からも、田舎の閉鎖感を感じさせる。
女の子の嘔吐で始まり嘔吐で終わる。
“黒んぼ”を村で飼育しなくてはならなくなったことに発端した、村のゴタゴタが延々と描かれる。
田舎の悪いところがぎゅうぎゅう詰にされた作品で、排除と強姦ばっかりの暗い画面構成により 濃い悲壮感に包まれている。
食糧不足で、農作物が盗まれても 黒んぼのせいにしよう!子供が亡くなって黒んぼが助けても黒んぼのせいにしよう!
丸く収まることがなによりも大事な社会なので、いやいや、これは手違いだ!と謎の理論を生み出し、すぐ何かになすりつけて楽しく笑い合う大人たちにもはや爆笑。パンチ効きすぎ!
黒んぼどころか、異質物は徹底的排除!の思考なので、疎開モンにも容赦なし。
子供たちは、最初こそ嘲笑っていたものの、徐々に味方に成り、守り出すところがまた切ない。
思考停止状態の村で、子供はまだ息をしていたが、ねじ伏せられて将来同じような人間に成ってしまうんだろうなと予感させる。
黒ンボ小屋を除く人たちの濡れた邪悪な瞳と
若者が、青空をバックに歌うカットが印象的。
「黒んぼは歌を歌っていたわよ!」というセリフにはハッとさせられた。
ひどい環境下に置かれても歌える心。
喧嘩か団結しかなく、くだらない内輪揉めばかりの田舎人には、文学も歌もなかった。
勝っていないのに、戦争が終わるわけないだろう?!、と今では考えられない思考にも驚いた。
絶望感がハンパないが、レビューしたくなる、話したくなる作品。この映画の思考停止具合は、現代を見ても他人事と思えなかったのである。
無関係だと思える程、近代的に成れたら。
本質は、日本人の根本は今でも変わっていないのかも、と感じた部分もあった。
観ていて謎の既視感があったことが、一番恐ろしいことなのかもしれない。