戦慄した。
正確にはドキュメンタリー映画ではないが、広義で言えばどの映画ジャンルよりもドキュメンタリーと呼ぶに相応しい、淡々と流れていく構成だからこそ、痛いほどにリアルで恐ろしかった。
私たちが考えているシリアやIS、人質や身代金などの概念が全て打ち砕かれる現実が実際には起こっていて、
緊迫した状況でも政府はどこまでも冷静で非協力的、他人事感が強くて悲しくなるし、人がお金で取引される世界観の虚しさと呆気なさ…
カウンセラーという存在もなんだか深掘りすると問題がありそうな感じで気になったり。
人質が一纏めに収監され、ご飯もまるで犬のような扱い…一人じゃないことで恐怖が共有出来る、話し相手がいる、という利点もありつつ、お金が払われ解放されていく度に、それが自分じゃなかったという悲しみと深い絶望感に何度も落とされてしまう恐怖は計り知れない。
シリアに赴く人に対しての"自業自得論"というのは、当時から絶えなかったが、知らない側の無知な故の間違いである可能性が高かったんだなと。
物語を追って追体験したからこそ、お金に変えられない人の命の尊さを実感し、帰ってこれた人を責めたりするべきでは絶対にない。
殺してくれと頼むほどに生きながら地獄を見続け、与えられ続ける恐ろしさ。
お金でしか現状交渉余地がないというのも、政治の問題を強く感じました。
シンプルで真っ直ぐな作りなので勉強として一度は観て欲しい作品です!