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食人族のbackpackerのレビュー・感想・評価

食人族(1981年製作の映画)
3.0
「食人族は誰なんだ」

ファウンド・フッテージ・モキュメンタリーと呼ばれるジャンルの先駆けにして、イタリア残酷映画の金字塔。まさかの4Kリマスター無修正完全版で劇場公開!
「これは映画だ」と理解していても、ショック・ドキュメンタリーとしてふんだんに盛り込まれたリアル動物殺害シーンの数々には、気分を害すること待ったなしです。
ヤコペッティ御大の『世界残酷物語』の系譜に連なる"やらせ捏造作品"ながら、動物虐待シーンや、劇中小道具として登場するスナッフフィルムが実際の処刑映像を用いていることが生み出す、問題意識感覚のズレそのものが、認識をバグらせ常識を震わせ、そして興奮と混乱の坩堝へと誘うのかもしれません。

本作において、未開の蛮族による奇怪な習俗が残酷であるかというと、実はそんなことありません。
本当に野蛮で残酷で人間性を喪失した行いをするのは、西欧の文明社会から映画撮影を目的にやってきた、4人の若者たちなのです。
若さと情熱と野心に溢れた青年達。陽の気をまとい、強欲で、他者を犠牲にすることになんの躊躇いもなく、異文化への蔑みを前面に出す。私がとことん、苦手なタイプの人間達です。
そんな最悪極まる若造どもが、文明人であることを笠に着て、さも自分たちが上位者であるかのように振る舞い、蛮行を重ねる。彼らの敬意を欠いた非道でショッキングな行いの数々がもたらす不快指数MAXな行いは、吐き気を催す邪悪としか言いようがありません。
また、映画の締めくくりとして、腐れ若造4人集が撮ったフィルムが、結果的に理性とモラルの象徴的存在であったモンロー教授の考えに従い、処分=証拠隠滅されてしまう……はずが、編集のジャックによって秘密裏に保管され、彼が20万ドル以上の収益をあげるという皮肉連発なオチに、怖気づきそうになりす。死者に鞭打つ必要は無いかもしれないが、彼らの凶行を忘れようとすることは、多くの意味を含んだ偽善と保身の集大成として、強い無情を感じるからです……。

ヤクモ族を小屋に押し込め火を放つという地獄絵図のビジュアルからは、『炎628』(1985年)を連想します。ただ、順序としては本作が先行しているんですから、ルッジェロ・デオダート監督のショック映像感覚には驚愕せざるを得ませんね。
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