140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ペイ・フォワード 可能の王国の140字プロレス鶴見辰吾ジラのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

ユートピアvsディストピア

賛否分かれたラストが伝えるのは、性善説を信じるか?性悪説に逃げるのか?

世の中はクソだと言い放ち1人の少年が始めた恩送り、ペイフォワード。ケビン・スペイシー扮する社会科教師の課題に対し、3人に恩を贈り、さらにそれを3人に渡す。この性善説思考の恩送りが、一大ムーブメントを生み出す。

本来上記の内容がカタルシスを生み出すべき作品なのだろうが、それにストップをかけるラストの余韻。

ムーブメントとは程遠い、母子家庭と社会科教師の交流。取材をする記者の謎解き要素を持ちながらもそれを熱量に変えられないこじんまりさ。当時の天才子役ハーレイ・ジョエル・オスメントのエッセンスの効いた演技、ヘレン・ハントの心弱気負け組女のフェロモン。要所のポイントを押さえてきてはいるが、スケールのあるギミックを小気味の良さだけで終わらせてしまった印象。

ただラストの展開は考えさせられる。

その場の感情はあまりに唐突だが、時間が経てば湧き出てくるユートピアvsディストピア感。

賛否を問うがゆえに思考を巡る、性善説と性悪説の脳内議論。

ペイフォワードを実現するにあたり壁になるものが描かれ、ディストピアSFの合理さに対して想いを馳せる。
先日鑑賞した「ハーモニー」のセリフの中にある「あっちは銃で殺され、こっちは優しさに殺される」というセリフがジーンと響いた。

困難ながら思考しユートピアを目指すのか?
諦めをもってディストピアに逃げるのか?




今作は、会社の研修にて鑑賞するというイレギュラーさはあったが、こんなにも考えを巡らさせてくれる作品なのだから儲けものである。

遅刻をするのは尊敬が足りないという劇中のセリフに耳が痛い。