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ベルリン・天使の詩のbackpackerのレビュー・感想・評価

ベルリン・天使の詩(1987年製作の映画)
4.5
子供は子供だった頃不思議に思っていた。なぜ私は私であなたではないのか?なぜ私はここにいてそこにいない?時の始まりはいつ?太陽の下で生きるのはただの夢?

人々の心の声を独白形式で聴き続ける天使たち。
彼らの世界には時間はなく、彼らの視界には全てがモノクロです。そんな天使のモノクロの視界を通して時おり見える、戦争の爪痕が残酷です。
人間の視点では、美しい色がつきます。このモノクロとカラーを織り混ぜた演出の映像美が印象的です。

ブルーノガンツ演じる天使が仲間の天使と語るシーン、天上の傍観者の立場を捨て、実態なき部外者から地上で自分の歴史を得たいと願います。
過去も現在も同じように見えている、人と天使の存在の果てしない違いから解放されたいのです。
世界の始まりから全てを見てきた永遠の存在が、人間になりたいと願う様子を余すことなく丁寧に描いている点が素晴らしい。
天使が人々に寄り添い、彼らへの愛情を常に持ち、その優しいまなざしと慈しむ心が随所に感じられます。

天使から人間になり感じる、痛み、色、味、そして情熱的な愛。喜びが強く感じられる演出です。最後のシーンで、モノクロとカラーの世界が混在し、天使がいつもすぐそばにいるという演出もとても良いです。

ピーター・フォークが刑事コロンボ役で出演していますが、彼もまた元天使という役回りだったのには驚きました。
最後はTHE ENDではなくto be continued…で終わるのも、余韻が残り味わい深いです。
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