前半は随分と『親密さ』してますねぇと謎に戦闘力53万くらいのつもりでドヤ顔で観ていたが休憩中にここを開いてみたら案の定似ている作品に並んでいるもんでそりゃそうだ…と反省した、まぁハマグチェの土台にあるリヴェット的なものを再認識出来たから良しとする。それを経ての後半がどうなるもんかと思ったが、むしろズラウスキーのと言うとちと過言があるがちゃんと「狂気」の方に舵を取っていって非常に良かった。随分と幼稚なお二人ではあるが多層的な作品が簡単に解体されていくかの様な展開をする、そう言えばマトリョーシカはいとも容易くビュル・オジエの手によってバラバラにされるし、ジャン=ピエール・カルフォンは自分のお召し物をカミソリでズタズタにする際にどう考えても誤って腕やら胸の辺りやらに切り傷を拵えてしまうし、お絵描きボードと化した壁紙は見るも無惨に剥がされていく。35mmのカメラの前に16mmがいるってのも一個のミソなのだろうし、それが一応はリハーサルを記録してし続けている（体）ってのも、この作品を重層的足らしめている要因になっているのだろう、知らんけど。『親密さ』と違う点はと言えば結局リハーサルはリハーサルのままで終わり本番には辿り着けないってとこか、並行して進んでいく夫婦の崩壊の方は随分と呆気なく終焉を迎えるが。にしたってこのビュル・オジエのビジュアルよ、メンヘラの鑑みたいなあの目つきに本気でゾクゾクしてしまう。この尺必要かと言われれば全然そんな事無いと思うが、ずっと変な感覚が続いていて謎に面白かった。

「新文芸坐シネマテークvol.50 50周年記念スペシャル」で鑑賞。

演出家のセバスチャンと女優のクレールはパリで暮らす夫婦。
舞台「アンドロマック」のリハーサル中に、クレールは突然主役を降りてしまう。

第一部131分。休憩をはさんで第二部124分のリストア版。
ひゃあやっぱり疲れた〜。
演劇があまり好きではない私にとって、3分の2（もっと多い？）がリハーサル風景っていうのは、ちょっと辛かった。
そしてそれが、終わりに近づいてもあまりうまくなっているとは思えない。
もちろんワザとだろうが‥。

そして演じているのは、マルク‘Oが率いる先鋭的な劇団員たちで、観客の一人だったジャック•リヴェット監督が、丸ごと引き連れて本作を撮ったらしい。

セバスチャン演じるジャン＝ピエール•カルフォンは実に嫌な男であり、そしてその他の劇団メンバーにもあまり魅力を感じなかった。

クレールを演じたビル•オジエもこの劇団員だったらしいが、彼女はものすごく可愛いかった。
家に閉じこもっていても、考えるのは舞台のこと夫のことばかり。
メンバーと浮気を繰り返す夫への嫉妬に苦しみ、おかしくなっていくクレールは、狂気というよりはチャーミング。
探偵ごっこ。
自分に似てると言われたバセットハウンドへの執着。
マトリョーシカ高速解体。
子どもか！

犬や猫の首根っこ掴みポイはちょっとウッとなったけど、自分も夫から首根っこ掴まれてたクレール。
夫は妻を都合のいいペット扱い？
まぁ、家にビル•オジエみたいな可愛い小動物を置いときたいという気持ちは、分からなくもないが‥。

大寺さんの解説で、「アウト•ワン」と同じく、本作も1968年の五月革命が背景にあるとのこと。
同じ長いなら、先日観た264分の「アウト•ワン スペクトル」の方が、出てる役者さん達が魅力的だったので、面白かったかも‥。

リヴェット「狂気の愛」女も男もいーかげんにしろ！って感じの真っ白な空っぽの世界、永遠に続くリハーサル、この作品もずっと話していたくなるくらい好きでした。木魚とか銅鑼とか並べた舞台の音楽もよかったしな。雅楽みたいなBGMもよかった。長いよリヴェット！4時間超え。そしてわたしがいちばん好きな俳優はビュル・オジェです。