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アシク・ケリブのhorahukiのレビュー・感想・評価

アシク・ケリブ(1988年製作の映画)
3.8
溢れ出る癒し効果!

『スラム砦の伝説』よりも更にしっかりと物語があることにまたまた驚いたのだけど、それがこの監督の場合には逆効果というか。めちゃくちゃ見やすいのだけど、わけわかんないながらも気持ちを全部持ってかれるような陶酔感をパラジャーノフ監督には求めてしまうのでそういう面では過去作と比べて少し拍子抜け感があった。

新手の反復横跳びみたいなヘンテコな動きをしながら「お前みたいな金が無い奴に娘はやれん!」って彼女の父親に言われた吟遊詩人の主人公が、1000日間の出稼ぎの旅に出るというお話で、大枠はいつものパラジャーノフとほぼ同じ。その旅の中で、色んな滞在先での出来事をオムニバスのような形式で描き、それぞれに対する吟遊詩人の対応の違いにより主張を婉曲的に見せる。

赤、白、黒。それぞれの色の象徴性もいつも通りで、白から黒への転換、赤と白の対比、そして白+鳩+カメラ=タルコフスキーへのメッセージという超わかりやすいこともやっちゃう。大好きやったんやろね。もしかしたら、あの爺さん埋葬シーンにもそういう意図が含まれていたのかな?

『ざくろの色』のような正面からの絵画的構図と『スラム砦の伝説』で良く見られた左右対称の静止画的な動を採り入れつつも、『火の馬』のように動的シーンも多いという、パラジャーノフの良いとこ取りな贅沢セット。でも個人的にはお子様ランチ的盛り合わせよりも肉なら肉、魚なら魚をガッツリ食べたい派なんで、少し物足りない感じがした。それでもパラジャーノフ作品ってずっと浸っていたい感覚にさせられるから凄い。眺めてるだけで癒し効果がある気がする。

そんで、あの虎にはビビった!引きのショットで遠いところにグリグリ動いてるのが映るのだけど、「え!?何この異形!」って絶対なると思う。だって四足歩行しながら首が360度回転してるんだもん。その後にドアップで映って、そういうやつね!とわかってめちゃ笑った🤣

あとやっぱり『ミッドサマー』だった😂いつも通り作中の至る所から感じるのだけど、ポイント的なところだと、「光のない人たち」のビジュアルってモロにサイモンのアレだよね(笑)

というか4月20日まで視聴可能って出てたから余裕を持って19日に見た(全然余裕じゃない…😅)のだけど、視聴期間の表示は20日午前0時まで的な意味やったらしく物凄くギリギリやったみたい。見終わったの23時過ぎだったし。危ねぇ!!

あと本作関係ないけど、『スローターハウスルールズ』の配信終了したみたいですね…。9日までだったっぽいけど、何があったんやろ…
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