YYamada

モーターサイクル・ダイアリーズのYYamadaのレビュー・感想・評価

3.7
【ロードムービーのススメ】
 ~旅を通じて人生を紡ぐ~

◆旅の目的
 放浪~南米大陸を実際の目で見る
◆旅の工程 12,425キロ
 ブエノスアイレス(アルゼンチン)→
 チリ→ペルー→カラカス(ベネズエラ)

〈見処〉
①「人生を変える」00年代の佳作

 これは偉業の物語ではない。
 同じ大志と夢を持った2つの人生が、
 しばし併走した物語である。

・『モーターサイクル・ダイアリーズ』は、南米の革命家チェ・ゲバラによる、若き日の南米旅行記『チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記』をもとにした2004年公開の映画。ロバート・レッドフォードが製作を務めている。
・1952年1月4日 、ブエノスアイレスの医大生エルネストは家族に見送られ、生化学者のアルベルトと共に1台のバイク「ポデローサ(怪力)号」にまたがり、南米大陸縦断旅行へ出かける。
・エルネストの恋人を訪ねたり出来た余裕のあった序盤から変わり、真夏の降雪にあったり、バイクが故障したり、喘息の発作したり、次第に旅は苛烈を極めていくが、アルベルトの社交性にも助けられた旅は1952年7月26日ベネズエラのカラカスにて終わる。
・旅路にて、2人のファインダーを通じて描かれていたのは、先住民族(インディオ)や、貧しい労働者、ハンセン病患者など、マイノリティーたちに対する、南米の厳しい格差社会。
・とくにチリの銅山で出会った、仕事を求め放浪を余儀なくされている共産主義者の夫婦から旅の理由を聞かれ、言葉に詰まりながら「…旅をするためです」と答えるエルネストの胸には、放浪目的の旅が終了し、不条理を打破しようとする情念が生まれた場面として描かれている。
・この旅路によってエルネストの人生は激変したが、我々鑑賞者の心にも余韻をしっかりと残す作品である。

②チェ・ゲハラ
・作中で描かれたペルーのハンセン病療養所における先住民たちの貧困と無権利を目の当たりにした2人は、それぞれの将来を認識し、エルネストは革命的政治活動に、アルベルトは実用的な医療科学を目指すことになった。
・アルベルトから「フーセル(熱い心)」と呼ばれていたエルネストは、本作の旅の後にブエノスアイレスに戻り、1953年に大学を卒業し、再び南米を流転。1955年にメキシコにてフィデル・カストロに出会い、革命家に転身、「チェ・ゲハラ」と呼ばれる存在に。そして、1959年1月1日に「キューバ革命」が達成される。
・一方のアルベレトは、翌1960年にゲバラからキューバに招待を受け、翌年ハバナ大学の教授に就任。基礎・予防医学研究所の創設者のひとりになる。
・また、2002年から2003年にかけて、アルベルトは、本作の制作現場に同行、アドバイザーを務め、本作のリアリティー向上に貢献。ラストシーンでは、アルベルト自身の近影として出演している。

③結び…本作の見処は?
○: 若い2人が、放浪の旅を通じて人生観が変わる描写を丁寧に描いている。
○: 南米の荒涼とした風景に原住民の写実に、厳しい社会環境が垣間見れる。
○: いわゆる伝記もの作品であるが、青春映画としても鑑賞出来る。
▲: 政治的メッセージは控え目にて、チェ・ゲハラ信仰者には、少し物足りないかも。
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