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櫛の火
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『櫛の火』に投稿された感想・評価

亡き恋人の形見である櫛を持ち歩き、自己喪失に苛まれている青年(草刈正雄)が、夫(河原崎長一郎)の愛憎に怯えている年上の夫人に惹き寄せられていく。古井由吉の原作を映像化している、エロティック・ドラマ。

4人の男と関係をもつ2人の女の間に、宙ぶらりんの青年が挟まれてしまう。夫人(ジャネット八田)の境遇と、亡き恋人(桃井かおり)の回顧録を重ね合わせながら、「男と女がやること(=人間らしさ)」を描いていくスタイル。

ブランコで蹴られながら問答して、口琴代わりに輪ゴムを鳴らして、体温計を口移しして、うめき声と共に夫人を追い掛ける。演者が自分の意志で動き回り、リップシンク無視のアフレコで、ひたすら喋りまくる(セリフを噛んでも気にしない)。

心と身体の乖離現象がドラマ内で肥大化しているため、もはや笑っちゃうレベルの乱反射劇場が展開される。「人と接するのが怖いけれど、どうしても身体が欲してしまう」という普遍的心理を体感しながら、一喜一憂すべし。
これは結構面白かったような覚えはあるんだけど、どんな話だったかは思い出せませんね。当時の桃井かおりの出演映画には、ほとんど外れはなかったものでした。
古井由吉の言葉が強い(音への拘りと描写の過密さ)小説を映画にする時に変に生真面目になってたらどうしようかと心配してたので、冒頭のトラクターに追われる草刈正雄の馬鹿らしさに心底安心した。というか、追われるように(好んでというよりそれが宿命であるかのように)セックスを繰り返す神代辰巳の映画は、古井の受身の感覚とかなり相性が良いんだと思う。

雪の中の立ちションベン、赤い電話からの三輪車、エスカレーターで男二人が何故か密着している画など、必然のわからないシーンがことごとく気持ちよくてさわやかな気持ちにさせられる。話は男女たちの薄汚いタペストリーって感じなのにやたらとスカッとする。やっぱりオロナミンCの看板が無駄に映されるからかな。元気ハツラツ!

混乱した人が多いらしい時制の変化には何故か全く困らず、話の流れはむしろわかりやすいと感じてた。桃井かおりのハスキー声が全然変わってなくて、童顔に対する違和感がすごい。

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