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原子人間のhorahukiのレビュー・感想・評価

原子人間(1955年製作の映画)
3.9
サボテン人間from外宇宙!
宇宙飛行士に寄生したエイリアンが徐々に変化し巨大化しながら人をぶっ殺していくSFホラー。

ハマーフィルムによるquatermassシリーズ一作目です。「ハマーホラーを見てない奴がホラーを語るな」とか言う過激派が一定数いるので、そろそろ見とこうと思って手持ちにあるこれから鑑賞。好きなもん見て好きに語ったらええやんって私は思いますがねー。

あらすじ…
宇宙へ飛び立ち57時間消息を絶っていたロケットが突然現れ墜落。計画の責任者クォーターマス博士たちがロケットの扉を開け、生存者1名を保護。しかし、3名いたはずの乗組員のうち他2名は姿形もない。生存者カルーンは言葉を発せる状態になく、明らかに身体に人間ではあり得ないような異常をきたしていた。彼は本当にカルーンなのか…。

過度な宇宙開発競争への警鐘を鳴らすSFホラー。宇宙という未知のものに対する漠然とした恐怖。外宇宙には人知を超えた何かがあるのではないか。その外宇宙を57時間も漂っていれば何かと遭遇してしまうのでないか。そういった根底にある未知への恐怖がオカルトチックな雰囲気を醸し出していてツボ。そして、人類としての危機よりも未知のものへの科学的な探求を重視するクォーターマス博士の狂気がなんとも言えない嫌〜な余韻を与えるのも良き。

突如ロンドンの田舎町に墜落したロケット。宇宙空間で57時間消息不明。内部との交信不能。異常な高温で近づけない。一体ロケットの中はどうなっているのか。未知なるものを予想させる様々な要素を冒頭からばら撒き「ロケットの扉を開ける」という行為に緊張感と何か恐ろしいことが起こるのではないかという期待を極限まで高めるサスペンス演出から始まる冒頭で一気に引き込まれるし、その際に用いられる長回しもモノクロ映像と相まって不穏な雰囲気を高めてて良い感じ。

その後も、どんどん人間から逸脱していく生存者カルーンの心の中でのせめぎ合いを描きつつ、色々なものを捕食して巨大化していくエイリアンが着実に人類の脅威へと変貌し、人間性をも失っていく様は単純に怖い。しっかりと描かれているわけではありませんがね(^_^;)

そしてヴァルゲスト監督のサスペンス・ホラー演出も冴え渡ってる。上記のロケット扉も魅力的だし、人間から少しずつ逸脱していく生存者カルーンを序盤から徹底的に観客に意識づけすることで、その後はエイリアンそのものを映像で見せずともしっかりと恐怖感を与えるよう考え抜かれた演出で構成されている。また、そういった上品さの中で時たま挿入される残虐シーンが良いスパイスになっている。中でもワンパンで人間の頭カチ割るシーンはかなりのインパクト。

もともとはテレビシリーズだったものを映画化したのが本作らしいのですが、映画としては恐らく三作作られています。色々と設定部分を端折ってる感がありますが、テレビシリーズの劇場版だとは思えないくらいしっかりとしたSFかつホラーになっていて、さすが全盛期のハマーフィルムといった感じですね。あと、VHSタグつけてますが、私がVHSで見ただけで日本版DVD出てますよ♫
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