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桐島、部活やめるってよのカルダモンのレビュー・感想・評価

桐島、部活やめるってよ(2012年製作の映画)
4.3
誰もがスクールカーストの苦味を感じながら大人になるべく足掻く。大人になると脱出できるのかといえばそんなこともなく苦味を思い出す瞬間は意外と潜んでいるんだけどね。高校当時の自分はどの位置にいたんだろうなんて思いながら、私のいた学校は私服高だったのでまた別なベクトル(オシャレ合戦)が加わっていたので実際のところ自分とはあまり重なる部分は無かったり。それでも共感してしまうのはたぶん中学時代の記憶かも。

公開時は口コミの伝播が凄い勢いで、邦画に対しては腰が重い自分も観ざるを得なかった。観終わった後の引き摺り具合がしんどかった記憶。観る前には桐島が主人公だと思っていたのだが全然違ってた。っていうか肝心の桐島は画面には出てこない。正確には桐島らしき人物が一瞬映り込むが明言はされない。
桐島の不在によって芯が抜かれたように右往左往するカースト上位の生徒。その一方でまったく影響を受けることのない映画部の連中。底辺として見なされている意識がやがて彼らの作るゾンビ映画として昇華するカタルシス。このシーンだけ画面比がシネスコサイズに変化する美しさ。

無個性を強いる制服がむしろ個々人に備わった能力を浮き彫りにし、同時に集団であることから逃れられない呪縛のようなものとして機能してしまう。同じ時間軸を別の角度から繰り返す手法は生徒個々の視点として矢印の交差が浮かびあがる。空白の中に消えていく日常の声は遠い記憶のようだった。
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    雑食。洋邦年代ジャンル問わず なんじゃコレ⁉︎に出会いたい