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キツネとウサギのbackpackerのレビュー・感想・評価

キツネとウサギ(1973年製作の映画)
3.0
アニメーションの神様ユーリ・ノルシュテインの、1973年製作の初単独監督作品にして、監督第3作。
原案は帝政ロシアの民俗学者・辞書編纂者のウラジーミル・ダーリの民話です。
1974年の、第2回ザグレブ国際映画祭児童映画祭の最優秀賞、第7回全ソ連映画祭の最優秀賞を受賞しています。

過去の2作(『25日・最初の日』『ケルジェネツの戦い』)では、オーバーラップによるスピードある演出が多々ありましたが、本作では控えめに。
子ども向け作品へと舵を切ったことから、内容がシンプルかつわかりやすいものになったこともあり、表現方法として抑えたと想像しています。

本作のキャラクターデザインは、監督の妻であり美術監督でもあるヤールブソワと考え、ロシアのガラジェッツ絵画のデザインを採用。ロシアン・フォークアートを参考とし、造詣されています。
この印象的な絵柄もあってか、本作をそのまま絵本化して販売されたりしていますので、そちらでご存知の方もいるのかも?

ストーリーはシンプルながら示唆的で、「大きく、力強く、恐ろしいからといって、本当に強く勇敢であるとは限らない」ということを、そのままに投げつけてきます。
ある種ダビデとゴリアテ的な内容にも見えますし、色々考えさせられますね。
男女(ウサギとキツネの性別)の立ち位置から見る"家を守る"ということへのアプローチも、今の価値観と照らし合わせて考えてみると、面白いです。
氷の城=贅沢・華美・支配者層、森の古谷=質素・堅実・労働者層と受け取れる構図も、ソ連の成り立ちからなる価値観のメタファーとして興味深くあります。
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