ryosuke

ゴダールのマリアのryosukeのレビュー・感想・評価

ゴダールのマリア(1984年製作の映画)
3.5
マリアの本 3.6
愛情に乏しくミソジニー気質で口は達者な夫のモデルはゴダールだったりするのかな。アンヌ=マリー・ミエヴィルとゴダールの共同生活を想像させる。全く関係ないのかもしれないが。
マリーを演じたレベッカ・ハンプトンの、子供らしい無邪気な挙動と達観してしまったような落ち着きのアンバランスな同居は、激動の子供時代の急激な成長の表れだろうか。ゴダール作品に頻出の本を読み上げる描写だが、本作では異質な「大人の」思考を体内に取り込もうとする子供の姿、境界線に立つ時期を表しているように思える。終盤には「前の私と違うの」という台詞も出てくる。顔には出さないが、両親の別居に引き裂かれるような思いもあるのだろうか、引用、模倣の言葉を話し続けたり、突如逆立ちをしたり、音楽に合わせて宙を殴りつけたりするマリーの姿が印象的だった。
「その頃」でのゴダール作品への繋ぎは斬新。

こんにちは、マリア 3.5
聖母マリアの処女懐胎を現代に蘇らせるという試み自体は興味深く、キレやすい大天使ガブリエルがタクシーでマリアの居所へ乗り付け、ガソリンスタンドで受胎告知を済ませて帰っていくシーンなど面白い。実際にこういうことがあったらヨセフは絶対怒るよねという与太話があるが、正にそういう展開が見られる。
しかし、とにかくミリアム・ルーセルは美しいな。顔面クローズアップの圧倒的な強さ。
若きジュリエット・ビノシュが見られたのもよかった。これが長編デビュー作なのかな?この時点では意外と地味だったり。
ガブリエルと女の子がジョゼフを睨みつけるカットの挿入の仕方や、ガソリンスタンドで引きの画になるとタクシーのライトのオレンジが画面に侵入する瞬間、夜道を走るタクシーを様々な角度の固定ショットで捉えていく描写など、ところどころにサスペンスフルな良い瞬間があるが、結局何にも繋がらない。
インテリジェント・デザイン説(なのか?)的な怪しい学説を語る教師のエピソードなど、どう受け取ればよいのか困惑するが、まあゴダールだししょうがないか。
やっぱりこの時期のゴダールを楽しむのはちょっと厳しいかね。ラストショット、真っ赤なリップの間、その奥底の暗闇に神秘を感じるべきなのかもしれないが...。
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