Yusuke0523

縞模様のパジャマの少年のYusuke0523のネタバレレビュー・内容・結末

縞模様のパジャマの少年(2008年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

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『縞模様のパジャマの少年』
(原題:The Boy In The Striped Pyjamas(or Pajamas))
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田舎町に越してきた少年と、鉄格子に囲われた“農場”に暮らす縞模様のパジャマを着た少年との交流を通じた、無垢な目からホロコーストを描いた秀作





あらすじ

ナチス将校を父に持つブルーノは、父の昇進に伴う引っ越しで、友達が誰もいない片田舎で暮らすことになり、退屈していた。

ある日、ブルーノは部屋から“農場”が見えることに気づき、そこに暮らす全員が縞模様のパジャマを着ていることが気になるが、親には裏庭に行ってはいけないと厳しく言われ、納得がいかない。

それに、縞模様のパジャマを着た人を、大人は誰もが口汚く罵り、時には暴力をふるう。
家に仕えるパジャマの老人のパヴェルだって、ケガをしたら手当てをしてくれ、話せばとても善い人だ。
どうしてだろう。

ある日、ブルーノは一瞬の隙を突いて裏庭を抜け、“農場”の格子まで行き着く。
そこで、パジャマを着た同じ歳の少年シュムールと出会う。
何も知らないブルーノは、シュムールという友達を得たことで、“農場”により興味を抱くようになるーーー。





感想

観賞後の途轍もなく重い余韻が、文章を打つ手を鈍らせる

こんな終わり方があっていいのだろうか
どんな反戦映画の中でも比肩するものはそう無い、衝撃のラスト



子供というのは、得てして好奇心の強い生き物だ

そんな子供の純粋な興味に、大人は言葉を濁し、誰も答えを教えてくれない
それに、パジャマを着た人は、軍服を着た人よりずっと善い人だ

父たちが集まって観ていた映画で、“農場”の正体を知るものの、現実との違いに戸惑うばかり
そりゃそうだ、自分が見ていた少年の暮らしぶりとは明らかに違うのだから

なぜ大人は彼に何も教えなかったのだろうか



また、各キャストの好演も非常に印象的

後に『ヒューゴの不思議な発明』で主役ヒューゴを演じることになるエイサ・バターフィールドが、ブルーノの無垢な少年像を体現
幼い彼の演技があったからこそ、この作品により説得力が生まれた
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『マイレージ、マイライフ』での好演が記憶に残るヴェラ・ファーミガが母役を熱演
当時のドイツにありながら、ブルーノの怪我の手当てをしたパヴェルに対して、軍人の妻という葛藤は見せながらもしっかりお礼を告げる等、人としての良心を大切にする女性なだけに、ラストの慟哭には胸が締め付けられた
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『ハリー・ポッター』シリーズにも出演するデヴィッド・シューリスが父役を熱演
一見家族思いに見えながらも、自身の野心に正直で作り笑いを駆使する冷徹な軍人ぶりだけど、最後の最後で親らしい感情が見えた一瞬が何とも悲しかった



所謂ドンパチをするような反戦映画ではない、ホロコーストを扱った地味な作品ではあるけど、こういう派手な画に頼らない作品こそ、戦争の愚かしさ・悲惨さがより浮き彫りになり、結末がずしんと重くのしかかる

この作品を観たあなたは、一体何を感じるだろうか
それがより善い世界になるきっかけになれば、この映画はきっと本望だろう
Yusuke0523

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