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『ジョーカー』
(原題:Joker)
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1度スクリーンで観て以来、久々の鑑賞
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あらすじ
コメディアンを夢見ながら、ピエロとして働いて生計を立てるアーサーは、発作的に笑ってしまう障害を抱えながらも、病気の母を看病しながら暮らす優しい男だ。
しかし、同僚に渡された銃を病院で落としてしまったことでピエロをクビになったある日の帰り道、電車で女性に絡んだ3人組の男にリンチされたが、咄嗟に持っていた銃で3人を撃ち殺す。
すぐにその場を立ち去り、公衆トイレに駆け込むが、そこで彼は自分の中でえもいわれぬ高揚感が湧き上がるのに気づくーーー。
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感想
既存のアメコミ映画の概念を軽く超えてしまった作品
本編始めにDCロゴを入れなかったことからも、本作を単なるヴィラン映画として描く気なんてさらさら無いぞ、という意気込みを感じる
これは、1人の男が純粋な悪に染まるまでの物語であると同時に、社会の抑圧からの解放の物語でもある
貧困な家庭で育ち、障害を抱えながらも夢を追うアーサーを虐げる、「社会」という無慈悲な悪の存在
「アーサーは出自が不運だっただけ」で済ませてはいけない
1歩間違えれば、僕らだってアーサーと同じ運命を辿る可能性もある
アーサーは観客の写し鏡であり、アーサーは僕らなのだ
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それとやはり気になるのは、どこまでがアーサーの妄想なのか
劇中でも、マレー・フランクリン・ショーに出演し、司会のマレーに客席から呼ばれるというシチュエーションがあるものの、それらは全てアーサーの願望が生み出した妄想だった
そして、あのラスト
あのラストシーンがあることで、物語が如何様にも解釈出来るようになった
果たして、ラストシーンのアーサーはジョーカーなのか??
はたまた、アーサーは単なる精神異常者で、この物語すべてが彼の思いついたジョークなのか??
とにかく全編に渡って、虚実が綯い交ぜになった構成なので、何を信じて何を疑うか、それは観客それぞれに委ねられている
こうして様々な解釈が出来る懐の深さこそ、名画の証だと思う
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また、50~70年代の曲が印象的に使われる点も特筆もの
Creamの『White Room』や、喜劇王チャップリンの『Smile』など、トッド・フィリップス監督曰く1981年のニューヨークがモデルとなったゴッサムの空気にぴったり重なる
特にFrank Sinatraの『That's Life』は、この映画そのものを表してるかのような曲
今までそんなイメージで聴いてこなかったけど、もう自分の中ではこの曲とこの作品がセットになってしまった
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かのチャップリンが残した言葉.
“人生は、寄りで見れば悲劇だが、引きで見れば喜劇だ”.
そんな言葉がぴったり当てはまる作品
誰かに気軽におすすめ出来るタイプの作品ではないけど、きっと観た人を掻き乱し、そしてその心に深く刻まれる作品になると思う