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カルティキ/悪魔の人喰い生物のhorahukiのレビュー・感想・評価

3.6
唯一神カルティキ蘇る!!
かつてマヤ文明を退けたとされるスライム状の怪物カルティキが、現代に蘇り人々を飲み込んでいくSFホラー。

フィルマではクレジットされていませんが、イタリアホラーの父マリオバーヴァ(本来は本作の撮影監督と特殊効果担当)がリカルドフレーダとの共同監督で作品を完成させたとされています。

あらすじ…
マヤ文明の遺跡の調査中に、奥地へ行ったニエト隊員。彼は戻ってくると同時に倒れてしまう。彼の持っていた銃は残弾ゼロで「カルティキ…カルティキ…」とうなされるように何度も呟くのみ。一緒に行ったはずのウルマー隊員の姿はなく、数名で救出に向かう調査隊だったが、洞窟の奥にある湖で遭遇したのは謎のスライム状の物体だった…。

同じく50年代を代表するSFホラーである『原子人間』と『マックィーンの絶対の危機』をミックスさせたような良いとこ取りな内容の作品。『原子人間』のカルーンを彷彿させる片腕を負傷した怪人と『マックィーンの絶対の危機』のブロブを思わせるスライム状モンスターの共演という豪華さ!それが豪華なのかはわかんないけど…^^;

カルティキと接触したことがきっかけで腕を負傷。そこからカルティキが細胞に作用し、次第に攻撃的になり人間性を失っていく男は『原子人間』のカルーンそのものだし、理由は違うにしても途中遭遇した子どもを襲えないところも瓜二つ。炎と冷却という違いはありつつも建物内の人の救出と封じ込めの流れは『マックィーンの絶対の危機』と極めて近い。

本作は、そういったイタリアホラー映画お得意の模倣の中にも、しっかりとオリジナリティを忍ばせており、カルティキに取り込まれ骨が見えるまで溶けてしまった腕や、ミイラのようにボロボロになり剥がれ落ちる顔面の映像的インパクトはさすがのイタリアホラーといったところ。そして、カルティキの厨二心をくすぐる設定が何よりの魅力になっている。

当時敵なしだったマヤ文明を退けた存在である唯一神カルティキ。そのグロテスクな外見にもかかわらず「女神」として人々から崇拝の対象とされており、2000万年前という遥か昔から存在していたという事実。そういったおぞましさを帯びた太古の神秘性・オカルティズムを根底に起きつつも、放射能を撒き散らす彗星の接近とともに覚醒するという未来的・SF的要素が融合することで、類似作品におけるものよりも重層的な魅力をもったモンスターとして形作ることに成功している。

火山爆発による真っ白な背景のもと、こちらに向かって歩いてくる黒い影。その正体は調査隊員であるにもかかわらず、背景のまばゆい光がまるでUFOから降り立ったかのような、もしくは異世界からやってきたかのような印象を与え、彼が既に人ではない「何か」であることを強烈に印象づける。こういうとこはバーヴァっぽい気がするけど、実際どうなんでしょ。
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