こうん

ザ・バニシング-消失-のこうんのレビュー・感想・評価

ザ・バニシング-消失-(1988年製作の映画)
4.2
巨匠キューちゃんが3回も観て「こわっ!これめっちゃこわっ!」と絶賛した伝説のサイコサスペンスの初の日本劇場公開。
そりゃ観に行くだわさ。休日月曜メンズデーの新宿シネマートはめっちゃ混みでした。

んで。オモチローイ!

もちろん初めて観ましたけど、めちゃくちゃ面白かったすね。
淡々と、しかしジワジワと映画的にイヤーな感じが詰め寄ってきて、予想がつくようなつかないような絶妙な展開の上に、なにそれ最悪!でも…?
…という着地と、この映画に描かれる怖ろしさというものが敷衍する範囲というか深さというか、その恐怖の裾野というものが今僕たちの息しているこの空間そのものだったりするのじゃないか…という卑近さこそが一番おっとろしい!
…という類の面白さで、心の中で手を叩いてはしゃぎながら映画館を後にしました。

大まかなプロットはシンプルなんですけど、直接的間接的に効いてくるような細部の積み重ね、映画的な余韻の積み重ねが素晴らしかったし、それに各キャラクター造形や、その関係性の描写も良かったと思います。
冒頭のガソリンがどうのという話の応対とか、トンネルのなかでのやり取りとか…もうあの辺で僕は「あぁもうやな感じ…さいこう」と悶えておりました。
あとレイモンさんの日常におけるサイコパスもしくはソシオパス的なふるまい、愛する家族とのやり取りとか…ここもジワジワと「あぁもうやな感じ…さいこう」と奮えておりました。
いわゆる”サイコ・サスペンス”という「羊たちの沈黙」(略して”ひつちん”と呼びたいのです)以降のジャンル映画とは違って、サイコパスと言うより、なんというのかな…子供のころ好奇心が強くて蝶々を生きたままバラバラにする…みたいな、そういうどんな人間でも本来持ちうる性分に根差した、人間ドラマになっていたと思いますですよ。
だからこそ、こちら側と向こう側の境界線があいまいで、向こうがこちらでもあるかもしれない…という所在が知れないからこその恐怖というものがあると思います。
SASKIA SASKIA SASKIA SASKIA SASKIA
レックスの愛する人を求める焦燥の発露で共感すべき表現なんだけど、どこか狂気じみていて、お尻の付け根がぞわぞわします。
でも、ほとんど目の前でいなくなる、ってのはキツイな。

映画が始まってナナフシが映った瞬間から”詰んでいる”感じがびしばし出ていて、個人的には「悪の法則」並みに好きな映画になりましたです。
これはまだ劇場でやってるのかしら?スクリーンで観るべし!
です。
こうん

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